終刊にして、本作は第一次世界大戦に突入。フランス本土は突如戦場と化す。「ソドムとゴモラ」の意味がこうした形で具現化。燃えるパリ。
シャルリュスの存在が一挙に際立つ。彼はドイツの血を引き、同時に同性愛者である。フランスが女とすれば、ドイツは男(あるいはその逆でもよい)。そんな彼が、戦火のパリにおいてドイツの立場にもくみしていることの意味。これは同時に、男に、あるいは女になりきっている、あるいはなりきろうとしている人々への、あるいは、フランス国民になりきろう、ドイツ国民になりきろうとしている人々への、痛烈な批評だ。また、シャルリュスのマゾヒズムも、深い。
中盤は芸術論と文学論。ドゥルーズの引用で有名になった箇所が登場。理知や理論への痛烈な批判。
老いによる、つまり時間の経過による、人格および容貌の劇的な変化(あるいは変化のなさい)に対する考察に入った。本作を読み始めたのはたしか、昨年の9月か10月頃。ほんの数日前に祖母を亡くした私にとって、あまりに身につまされる内容で、まるで、祖母を亡くす準備をするために本作を読んでいたかのような錯覚を覚えた。特に、老いるにつれて、すべての欠点を失ってしまった人物に関する言及が、私の心情をピンポイントで串刺しにした。
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ついに読了。当初は死ぬまでにプルーストを一度は通読しなければという気持ちで読み始めたのだけれど、いま、再読したくてうずうずしている。次は吉川訳で。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説・詩
- 感想投稿日 : 2019年5月9日
- 読了日 : 2019年5月12日
- 本棚登録日 : 2019年5月1日
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