『どこいったん』などのちょっとヒヤリとさせられる絵本の作者であるジョン・クラッセンの本。ちょっと長めの絵本。
「ある夜、みな寝しずまった 真夜中に、オティラはとうとう逃げた」
という文で始まる。柴田元幸の訳では、オティラが男の子か女の子かは判然としない。
原文にはあたっていないが、オリジナルでもわざとそうしてあるのかもしれない。
ところで、オティラは、どこから逃げたのかは書かれていない。
だから、本作を読めば読むほどにそこが怖く感じられてくる。
というのも、オティラはどこかから逃げ出し、森へ迷い込み、やがてある屋敷にたどり着く。
扉を叩くと、胴体のない頭蓋骨がオティラを出迎える。
ふつうなら恐怖におののくところだけれど、オティラは平然とし、屋敷のなかへ入っていく。
一方で、いったいどんな恐ろしい場所から逃げ出してきたのかと、背筋がぞくっとさせられる。
オティラはこの頭蓋骨とともに一夜を過ごすことになるのだが、夜中になるとこの頭蓋骨の胴体部分が、頭蓋骨を探しにくるというのだ。
じっさいオティラが耳にしたとおり、胴体部分の骨が現れる。
さてオティラと頭蓋骨はどうなったのか……
読み終えたあとで、こんな不思議なカタルシスもあるのかと、なんだか初めての食べ物を食べた後のような余韻が残った。
ダークな物語だけれど、これで良かったのだと、妙に納得させられた。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
絵本
- 感想投稿日 : 2024年6月11日
- 読了日 : 2024年6月11日
- 本棚登録日 : 2024年6月11日
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