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フェルマーの最終定理 (新潮文庫)
- サイモン・シン
- 新潮社 / 2006年5月30日発売
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2012年1月15日
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聖少女 (新潮文庫)
- 倉橋由美子
- 新潮社 / 1981年9月25日発売
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「悪徳の限りを尽くす」という表現がある。
しかし、悪徳が尽きてしまった後のこころには何が残るのか。
過去に人生の負の側面といえるものを謳歌した「ぼく」は、記憶を失った未紀の存在に吸い寄せられていく。「ぼく」は、過去に「ぼく」と同じ蜜を味わった未紀の残したノートの真相に近づこうとするが……というのがあらすじ。
この小説では美しい比喩を用いて、美学を持って悪事をする人間が丁寧に描かれている。
今でいうところの「厨二病」タイプの人物が数多く登場するが、簡単に型に入れることができるようなものでもなく、「昭和の厨二病すげぇな」と思ってしまった。
とりわけ未紀が魅力的で、彼女の言動の裏を読みながら小説を読み進めるとより楽しめるだろう。
2012年1月1日
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煙か土か食い物 (講談社文庫)
- 舞城王太郎
- 講談社 / 2004年12月14日発売
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この小説の肝はある人物の成長過程を描いた10章と11章。
単なる過去編にとどまらず、小説全体の中核にもなっている。
そこには隙間なく暴力という暴力が詰め込まれている。
被虐と加虐を行ったり来たりのこの暴力の連鎖終わらせてくれよと主人公に同調したくなるが尚も続く。
わずか60頁ほどに暴力が支配する10年間がとんでもない圧力で描かれていて、物語の世界に強く惹きつけられた。
2011年12月30日
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夜のピクニック (新潮文庫)
- 恩田陸
- 新潮社 / 2006年9月7日発売
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感性の豊かなころでしか気付けないことはたくさんある。
今をつまらないと思っている人は、先を急いでどんどん進んで行ってしまうだろう。
でも、視野を広げて今を見据えることも選択肢の一つとして考えてみてもいいんじゃないだろうか、ということを示唆してくれた一冊。
2011年12月27日
主人公は西へ東へと駆け回って失踪者の手がかりを掴んでいくのだが、一度にあまり多くの情報が得られることが無く、もどかしい。
また、主人公は失踪者のとった行動をよく考察するのだが、妄想の域を出ない無駄なものもある。そこは読者の想像力を信頼して、思い切って省いた方が物語の世界に深みが出るだろう。
失踪者の人格は、物語のなかでの多くの証言から、うまく浮かび上がらせることに成功している。失踪者あるいは彼女に近い境遇にある人を見つめる私の視点も多角的なものになった。
2011年12月1日