ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する

  • プレジデント社 (2013年1月29日発売)
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すべての優れた組織のミッション(使命)は、自社が関わり合う人々の生活を豊かにし、ロイヤルティを築くことにあると信じている。そして、優れた組織は株主だけでなく、従業員、ビジネスパートナー、とりわけ顧客に対して、プラスの影響を及ぼさなくてはならない。

顧客リレーションシップを犠牲にして獲得した利益が、悪しき利益だからだ。もし顧客が惑わされたり、不当な扱いを受けたり、無視されたり、強制されたりしたと感じたとしたら、その顧客からもたらされる利益はすべて悪しき利益である。

良き利益と悪しき利益とを識別するための質問とは、どのようなものだろうか。質問自体は単純なものだ。すなわち、「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか」というものである。そしてこの質問を基に得られる指標が「 推奨者の正味比率(NPS)」である。

NPSは、どんな企業の顧客も三つのカテゴリーに分類できるという基本認識に立脚している。すでに説明したとおり、「 推奨者」というのはロイヤルティの高い熱心な顧客で、自らが継続購入客であるのと同時に、友人に対しても顧客になるように薦める。「 中立者」というのは、満足はしているがそこまで熱狂的でない顧客で、競合他社からの働きかけになびきやすい。そして「 批判者」は、劣悪な関係を強いられた不満客である。先の質問に対する顧客の回答が、三者を分類する基準となる。たとえば、一〇点満点中、九点または一〇点と答えた顧客は推奨者であり、以下、中立者、批判者の順に点数が下がっていく。

顧客は二つの条件が満たされない限り、個人的な推奨を行わないことも判明した。まず、その企業が優れた価値を提供していると、顧客が信じていなくてはならない。

第一の条件は顧客の理性を惹きつけるものであり、第二の条件は顧客の感情に訴えかけるものである。この両者が満たされたときに初めて、顧客はその企業を熱心に友人に薦めるようになる。

NPSが目覚しい改善をもたらすのは、次のような場合である。  ①シニアな経営陣、特にCEOが個人的にネット・プロモーター・システムを通した顧客ロイヤルティの改善を、きわめて重要な優先事項として受け止めている。彼らは経済的に取り組むべき理由(収益ある成長につなげること)と、動機付けや士気の面で取り組むべき理由(自社が基本的価値観をどれだけ実現できているかを測定すること)の両方を理解している。  ②NPSの顧客フィードバックを組織全体の主要な意思決定プロセスに組み込み、学びと改善の「クローズド・ループ」をつくっている。何か特別な部署の責任やプログラムとしては扱わず、日々の基本的な優先事項の中に組み込まれている。  ③短期的なプログラムや取り組みとしてだけでなく、企業文化の変革と成長にいたる長期的な道のりとしてネット・プロモーターに取り組んでいる。企業が収益を伴う持続可能な成長を実現させたいのであれば、組織全体でNPSに取り組まなくてはならないことを理解している。  この三つが成功への鍵である。

結局のところ、顧客に喜んでもらうための最も強い要因の一つは、企業がきちんと話を聞き、不満や提案に応えることだ。そうした取り組み姿勢は、同社が顧客を重視しており、大切にしていることの証明となる。それが、顧客と良い関係を築くための基本的な必要条件となる。

ほとんどの企業は、より顧客志向の企業文化を築きたいと思っている。ネット・プロモーター・システムは、この目標の達成に役立つ一連のさまざまなツールや有用な手法を提供するものである。だが、顧客にフィードバックしてくれたことを感謝し、根本原因を確かめ、顧客へのサービスを向上させる方法を学び、適切な対応をするといった「クローズド・ループ」をつくることよりも強力なものはない。NPSは根本的に、測定やサービス・リカバリー以上の存在である。NPSは、人々を大切に扱うことを基礎にビジネスを行う方法なのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス•経済•キャリア
感想投稿日 : 2020年5月9日
読了日 : 2020年5月9日
本棚登録日 : 2020年5月9日

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