文藝 2020年秋季号

  • 河出書房新社 (2020年7月7日発売)
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本棚登録 : 199
感想 : 22
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芥川賞の宇佐見りん「推し、燃ゆ」を目当てに。特集の「覚醒するシスターフッド」も面白かった。男性性に支配された社会を諦めないでいたいし、知らぬ間に自分も加担していないか厳しくいきたい。

「推し、燃ゆ」推しのために生きている、いや、推しがいるから生きていられる。まさに、文字通りに。推しがいなければ、どうして生きていけよう。あかりの必死さに、一気に読んでしまった。推す行為がそのまま生存の意味になるなんて、わからない人もいるだろう。自分としては、あかりほど推しに寄り切った生活はしていないので、若干距離を感じてしまうこともあるが、あかりのような心情なのだろうか、と何人かの周囲の人を想像した。推すことは生きることなのだ。それを羨ましいと思うし、危ういとも思う。推しはいつかいなくなってしまう。よほどの地下アイドルや地域密着型や若手でもない限り、自分が積極的に関与できる存在ではない。けれど、そんな物理的には隔たりがあっても身近に感じる推しを推すことと、物理的に身近にいる誰かを愛することと、リアルにしろネット上にしろ人間関係の中で自分を保って社会生活を続けていくこと、それらに上下があるだろうか。どれも生きることではないか。

柚木麻子「パティオ8」柚木さんらしい、妙に強い女性たちの物語。各人の個性と活躍の仕方ににっこり。

ヘレン・オイェイェミ「ケンブリッジ大学地味子団」地味とは。桜庭一樹の『青年のための読書クラブ』を思い出す、したたかで楽しい集まり。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9: 文学
感想投稿日 : 2021年2月21日
読了日 : 2021年2月20日
本棚登録日 : 2021年2月20日

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