新年一冊目。
こちらの本、どなたかが薦められていた本であったが、全く忘れてしまっていて、ちょうど図書館で予約できたので、軽い気持ちで読んでみたが、思わぬ深さにたじろぐ。
「槍投げ」という競技は、この本を読まなければ、おそらく人生で関わることはなかっただろう。しかし、槍投げという競技を通じて語られる、溝口さんのトップアスリートの流儀は、どの競技、いや人生において通じるものがあると感じた。
特に、溝口さんは、徹底的に「現実主義者」であり、感覚的な身体の動きを、言葉で表現できるという、文学的な才能も持ち合わせているように思えた。
トップアスリートの繊細な感覚に、言葉が加わると、力強く刺さる。イチローさんや武井壮さんが、技術について語る時と同じように、トップの世界で生きる人は、決して常識の積み重ねから生まれてこない言葉を持っている。
私が、特に印象に残っているのは、リラックスについてだ。今までは、全身の筋肉を緩めることだと思っていたが、溝口さんによれば、真のリラックスとは、「力は入っているのだが、自分では意識していない状態」のことを指すという。
この、いつでも切り替えられる状態にしておくことが、「リラックス」というものなのだろう。
そして、それは集中にもつながってくる。
『ずっと集中していてうまくいかない。ポイントだけ集中すれば、後はおしゃべりをしていても大丈夫なのだ。(P97)』スポーツ、とくに一瞬の集中力の積み重ねである、槍投げであるが故に、緩急が必要なのだが、実はその法則はそこにとどまらない。全てに応用がきく。
溝口さんはまた、他の競技で身についたものを、応用できないか、常に考えていたそうだ。
今では、技術を他の分野で応用することは、当たり前のように思えるが、おそらくそうでなかった時代に既にやっていたということが、すごいを通り越して恐ろしさすら感じた。
一年の始まりからこれほどにも力強く響いてくる本に出会えてよかった。
これだから読書は、やめられないのだ。
- 感想投稿日 : 2023年1月1日
- 読了日 : 2023年1月1日
- 本棚登録日 : 2023年1月1日
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