さばの缶づめ、宇宙へいく 鯖街道を宇宙へつなげた高校生たち

  • イースト・プレス (2022年1月18日発売)
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人間、食べなければ生きてはいけない。

それは宇宙であっても同じ。地球と異なる環境で、栄養を摂るために、どう工夫するか、それらの集大成が宇宙食であり、宇宙食で思いつくのは、子供の頃に見た、フリーズドライの食品たちだった。

この本のタイトルを見て、確かに缶詰なら宇宙に飛ばせるのではないか、とページをめくったが、話はそれほど単純ではなかった。

宇宙食でも用いられるHASSPの取得から、『宇宙食、作れるんちゃう?』という一言をきっかけに始まったこのプロジェクト。

学校の統廃合や、そもそも缶詰類が、廃棄物の問題で宇宙に持ち込めるかどうかなど、向かい風は吹き荒れる。
それでも、14年もかかって最終的に実現できたのは、代々引き継がれてきた研究と、幸運と、そして、「楽しさ」があったからとこの本は述べている。

「楽しさ」といっても、気分が高揚するばかりの楽しさでは決してなく、「やりがい」や「達成感」、そして「報われることの喜び」の集積が、振り返ってみると「楽しさ」があったと、要約されてしまうが、決してそんな単純なわけではなかったことが、この本の節々に語られずとも現れてくるような気がした。

宇宙食に限らず、同じ制限された中で食を摂るという意味で、災害食に応用できないか、という研究も社会的に進められているそうだ。

宇宙食と災害時の食糧は、どうしても日常からかけ離れたイメージがある。しかし、それらも見えない創意と工夫で、いつか日常食べるものと一緒に、食卓にのぼるようになるのかもしれない。

「いつか」は、もっと近くにあるのかもしれない。
そう、希望に満ちた気持ちになることができました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年2月7日
読了日 : 2022年2月7日
本棚登録日 : 2021年12月24日

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