- 孤独のすすめ - 人生後半の生き方 (中公新書ラクレ)
- 五木寛之
- 中央公論新社 / 2017年7月6日発売
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五木寛之は年配の男性だ。年配の男性はおおむね孤立する傾向にあると言われ非難されるが、実は非難されるにはあたらないと論じてくれると思っていた。
なんだか若年層と老年層に横たわるのは世代間ギャップでなく、階級闘争だと言われてもなあ。
回想こそ老後の時間を豊かにすると言われると安心するが、もっと男性老人の孤独を応援してほしい。
2024年3月24日
高校3年生の頃読み始めた雑誌「BE-PAL」に良く記事を書いていらっしゃった。その頃、著者は30代後半で、寒山に移り住まれて間もないころだったんだ。30代後半に自分は何をしていたんだろうと、自分の人生に照らし合わせて考えることが多くなった。そして、著者が60歳を迎える頃、自身の生活についてどう考えていらっしゃったのだろう。
軽妙かつ洒脱な文章で面白く、寒山での暮らしを楽しむ著者の価値観に文句があるわけがない。ただし、カタカナ言葉が多すぎる。アメリカ語を多用するのは植民地根性と本多勝一さんに叩き込まれた僕でなくても、読みにくさが残るのではないか。
2024年3月17日
- 遺言未満、 (集英社文庫)
- 椎名誠
- 集英社 / 2023年11月17日発売
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われらが椎名誠さんの『遺言未満』だ。どんな死生観を聞かせてもらえるのだろうと期待して読み始めたが、期待は裏切られた。
国内外の葬送周辺を取材してまわったレポートだ。時に死生観が織り込まれるが、総量が少なく深みに欠ける。そのままストレートに、年齢的に死に近づくにつれ “死ぬ”ことについて椎名誠さんが考えたことを読みたい。
遺言未満、の読点ってなんだ? まだ続きがあるってことか? 本文中に書かれていたっけ?
2024年3月10日
フェミニズムの書かと思ったけれど、その範疇にとどまらない内容だった。人工中絶に伴う母体の負担、リスクを繰り返し説き、その発生原因は無責任な射精だと。
確かにその通りだと理解できる。SNS由来の短い章立てで、納得の内容なのでわかりやすく記憶に残る。あとは機会にあたって実行するのみだけど、そんな機会ももうないと思うとちょっと寂しいアラ還の春。
2024年3月3日
- インパラの朝 ユーラシア・アフリカ大陸684日 (集英社文庫)
- 中村安希
- 集英社 / 2013年1月18日発売
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開高健ノンフィクション賞を受賞した時から気になっていたけれど、今まで読まずにいた。読み終えた今思うのは、『15年間損した。もっと早く読んでおけばよかった。』と。
文章は簡潔でいて筋肉質。それでいて情緒はあり、読後は感慨深い。
ユーラシア大陸からアフリカ大陸を旅して2年。序盤のアジアと終盤のアフリカではタッチが異なるが、それは国情の違いか、流れた旅の経験がそうさせているのか。
あったことをそのまま並べ、全てをアピールするのではない。
大きく心を動かされたこと、強く感じたことを、その出来事と著者の心を両方描写しているので、より著者の心の内が強調されている。読者である僕に伝わるのは、著者の個人の尊厳のとらえ方と幸福の感じ方が一貫して変わらないことだ。この感覚が旅行記に深い読後感を与えていると思う。
2024年2月25日
- そこにある山-人が一線を越えるとき (中公文庫 か 96-1)
- 角幡唯介
- 中央公論新社 / 2023年12月21日発売
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冒険と結婚を並列して語っている。
それは目の前に立ち現れた事態で、事態に対処する成り行きが結婚であっても、極夜の北極圏を冒険することも、事態に対処することについて、どちらも同じなんだと。
最終盤の冒険論は特に印象的で、40代を迎えた冒険家は体力の衰えを感じながらも、うまく次のステージに移行できたように見える。60代を迎えようとする私も次のステージに移行しようとするが、体力や身体の機能的な劣化が想像以上に大きく、戸惑っている。
50代の頃、60代になった時にやりたいと思い浮かべたことに対し不安がよぎる。冒険家の思索を咀嚼し自身の考え方のベースをつくりたい。
冒険家の思索と冒険行を楽しみに、体力優先のお楽しみを頑張りたいな。
2024年2月17日
- 自衛隊最強の部隊へ-偵察・潜入・サバイバル編: 敵に察知されない、実戦に限りなく特化した見えない戦士の育成
- 二見龍
- 誠文堂新光社 / 2019年1月8日発売
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おりしも能登地震への派遣で機動力を見せる自衛隊だが、本分は軍隊だ。
ただ、真正面からぶつかるだけが力ではない。緻密な観察、怜悧な分析、静かな実行が兵士の生存を促進するのだ。
本書はSCOUTと言われる戦闘技量の訓練を導入する陸上自衛隊第40連隊の様子が描かれている。いろいろな方面で備えないといけないのは理解できるが、平時の業務として訓練に取組み、有事の際には実際にことにあたる。職業としてどんな覚悟があるんだろうな。そんなところもこのシリーズで読み解ければ良いのになと思う
2024年2月4日
- 暗殺者の屈辱 下 (ハヤカワ文庫NV)
- マーク・グリーニー
- 早川書房 / 2023年12月20日発売
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裏表紙の登場人物一覧を見ると、それぞれの表情が脳内で動き出す。僕の中では頂点に近いほど、本シリーズの大ファンだ。
息をつかせないタクティカルアクションは上巻から下巻まで徹頭徹尾貫かれている。また、実在の人物を思わせる設定も興味を掻き立てる要素の一つだ。使用される銃器が新しいものに変わっているので、ミリタリーマガジンで勉強しないといけないな。
本作「暗殺者の屈辱」は帯にも書かれるように、まさに転換点となる内容だ。登場人物の入れ替わりがあり、大きく状況が変わる予感だ。一気読みした瞬間から次回作を期待してしまう、期待を裏切らないシリーズだ。
2024年1月28日
- 暗殺者の屈辱 上 (ハヤカワ文庫NV)
- マーク・グリーニー
- 早川書房 / 2023年12月20日発売
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裏表紙の登場人物一覧を見ると、それぞれの表情が脳内で動き出す。僕の中では頂点に近いほど、本シリーズの大ファンだ。
息をつかせないタクティカルアクションは上巻から下巻まで徹頭徹尾貫かれている。また、実在の人物を思わせる設定も興味を掻き立てる要素の一つだ。使用される銃器が新しいものに変わっているので、ミリタリーマガジンで勉強しないといけないな。
本作「暗殺者の屈辱」は帯にも書かれるように、まさに転換点となる内容だ。登場人物の入れ替わりがあり、大きく状況が変わる予感だ。一気読みした瞬間から次回作を期待してしまう、期待を裏切らないシリーズだ。
2024年1月28日
- カレーライスと餃子ライス
- 片岡義男
- 晶文社 / 2023年9月12日発売
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図書館のカウンターで受け取ったとき、その装丁から晶文社の片岡義男作品であることがわかった。係りの方の「リクエストされた本に間違いないですか」の問いによどみなく答えられた理由はそれだ。
本書はカレーライスにまつわるエッセーをまとめた「カレーライスは漂流する」と餃子ライスに係る「餃子ライスはひとりで食べる夕食の幸せ」の2部構成だ。同じ著者の「町から初めて、旅へ」と同じ構成だ。あるいは「幸せは白いTシャツ」の時のように「Happiness is・・・」のタイトルの流れだな、と片岡義男マニアなことを思いながら読んでいく。
漫才のコンテストで審査員が、小さな1つのテーマを4分の漫才に拡げていったねと評することがあるが、本書を読んだ感想と似ている。よく、カレーライスというテーマでこれほど多様な物語が紡げましたねと、僕は評したい。餃子ライスについても同様だが、こちらは少し力業的でもある。いや、どちらも同等か。
小説のストーリーはともかく、文体だけでこれほど独自の世界を作れる作家が他にいるだろうか。今回の作品もどっぷり片岡義男さんの世界で幸せに浸ることができた。
Happiness is reading Kataoka’s.だな。
2024年1月20日
- クララとお日さま (ハヤカワepi文庫 イ 1-10 epi109)
- カズオ・イシグロ
- 早川書房 / 2023年7月19日発売
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子どもの親友(と書かれるが、乳母に近いイメージだ)として開発された、AIを搭載した精巧なロボットAF(Artificial Friend)が店先に並んでいるところから物語は始まる。AFであるクララが語る内容から、格差が激しくなった世の中の仕組みを読者が理解していく手法だ。また、AFが太陽光をエネルギー源としていることから、クララには太陽信仰に近い感覚があることも理解できるよう仕掛けられている。
人工物だけれど人格がある、いわば “ニンゲン”をどう扱うのか、同じ著者の『私を離さないで』とよく似たテーマだ。
子供の親友として成長に付き添い、子供が成長した後は廃却されるAFの “人生”を見届けるのは廃却場の職員だ。ただし、クララの場合は親友としてあてがわれた病弱な少女が亡くなった後、その少女の代役として生きていく役割を担っていたため、物語は深みを増している。
結果的に少女は健康を取り戻し成長したため、クララは短い使命を終え廃却される。クララの意識はもうろうとしたような描写になっているが、エネルギー源である太陽がある限りクララの余生は永遠に近いのではないか。クララは少女の親友として生きた短い十数年間を反芻し、永遠に近い余生を生きるのだろう。
クララは他のAFより優秀であるよう描かれている。登場人物の中で、低層の階級に属する優秀な少年も描かれるが、低層階級から抜け出すまで物語は展開しない。AFであれ、人間であれ、属性から逃れることはむつかしい。
2024年1月6日
- 週末 (Shinchosha CREST BOOKS)
- ベルンハルト・シュリンク
- 新潮社 / 2011年6月1日発売
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20年前に逮捕された赤軍テロリストが恩赦を得て出所する。その姉が彼を出迎え、かつての友人たちを集め山荘で週末を過ごすことを計画した。
読み始めたころ、登場人物と略歴が憶えきれず一覧表にしようかなと思ったくらいだが、中盤あたりから各々のキャラクターが立ち、僕の脳内で行方不明になる者もおらず、すっかりおなじみのメンバーになっていた。
閉鎖された空間で次々に思うことを口にしていく、まるで演劇の舞台を見ているようだ。皆のセリフも舞台のセリフのようで、文学の深みに欠けるように感じる。
静かな展開で、ところどころに穏やかな起伏がありテーマも文学的ではあるけれど物足りない印象だった。
2024年1月6日
- 裸の大地 第二部 犬橇事始
- 角幡唯介
- 集英社 / 2023年7月5日発売
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大冒険譚が書かれているわけではない。
言わば冒険に出掛けるための準備譚で、犬ぞりチームを仕立てていく工程が書かれている。
面白い。
漂泊シリーズの第2弾で、クライマックスがあるわけではないけれど、ワクワクしながら読み進めていく。たぶんこんな風に著者の漂泊旅をず~っと読ませてもらうことになるんだろうな。
何より、ご安全に。
2023年12月27日
- 自転車に乗る前に読む本 生理学データで読み解く「身体と自転車の科学」 (ブルーバックス)
- 髙石鉄雄
- 講談社 / 2023年10月19日発売
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ブルーバックスシリーズはそういう本だと解っているいるけれど、一言。
1週間に何回乗ればより効果的ですよ、ケイデンスはこれぐらいが効果的ですよとデータをもって、脂肪代謝や最大酸素摂取能力を向上させる方法が解説されている。
効果を示されないと何も始められないのか。
できないことはできないし、できることしかできないんだから、とりあえずやってみようよ。結果は後からついてくるし、とりあえず始めてみれば色々わかってくるから。
考えるのはそれからね。
読むのは乗り始めてからね。
まずは気楽に始めようよ、楽しもうよ、と言いたい。
2023年12月22日
- [新版] ジャスト・ライド──ラディカルで実践的な自転車入門 (ele-king books)
- グラント・ピーターセン
- Pヴァイン / 2022年5月30日発売
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僕は自転車レーサーじゃない。
だったらもっと自転車に対して、柔軟に考えれば良いんじゃないか。レーサーに倣わなければ、もっと楽に自転車を楽しめるし、それは人生を楽しむことにつながるんじゃないか。
自転車メーカーは資本主義原理に生きているので、日々アップデートして商売につなげていくけれど、近年特に感じるのは、速く走るため、気持ちよく走るためのアップデートではなく、アップデートのためのアップデートになっているように感じる。
僕がそれについていけてないだけかもしれないけれど・・・。
レーサーでない限り、レーサーの常識にとらわれず自転車を楽しもうという精神が本書には詰まっている。『オールロードバイク・レボリューション』はデータの裏付けと共に同様の主張がされていたが、本書は著者の価値観が裏付けになっている。
そう、ボトルにいっぱい水を入れ走り出そう!Take it easy!気持ち良く走ろうよ、とあらためて考える1冊でした。
旧版に続き、新版も買ってしまった。同じ内容なのにね。
2023年12月16日
- あなたのものじゃないものは、あなたのものじゃない
- ヘレン・オイェイェミ
- 河出書房新社 / 2023年6月15日発売
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物語が難解だと感じる。設定が従来の価値観では計り知れず、古い価値観で凝り固まった僕の感性では理解がむつかしい。物語が頭に入らず面白くなって来ないのだ。ジュンパラヒリ『思い出すこと』に続き、2冊連続の途中放棄だ。
柄に合わない選書はダメかな?
図書館で借りずに本屋さんで買ってきて手元に置き、1編づつボチボチ読んでいこうかな。
2023年12月3日
- 思い出すこと (新潮クレスト・ブックス)
- ジュンパ・ラヒリ
- 新潮社 / 2023年8月23日発売
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引っ越した先に置いてあった机の引き出しに詩が綴られたノートが残されていた。それを詩集として編纂する中で、描かれた詩を通して自らの来歴を表現していく。
手法としては、森羅万象がそれぞれに語る言葉が少年の姿を浮かび上がらせる、丸山健二さんの『千日の瑠璃』に似たものか。千日の瑠璃は面白く読み終えたが、本書「思い出すこと」は途中で投げ出してしまった。
しばらく放置しておき、何かの拍子に再び手に取り夢中に読み込むこともたびたびだが、本書は図書館で借りた本なので返却すると再び手に取るチャンスはなくなるかな。今のところ、縁がなかったとして図書館に返却しよう。
2023年11月19日
- 素晴らしき自転車レース
- 谷口和久
- 未知谷 / 2023年8月18日発売
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表紙の写真はクレディアグリコルの選手の後ろ姿、裏表紙はバネスト、エウスカルテルの選手の写真。いずれもヘルメットをかぶっていない。90年代からゼロ年代にかけて、僕が一生懸命レースを追いかけていた頃の自転車レースの写真だ。まだまだニッチな存在の自転車レースを応援していた同志感が漂う著者は、僕より5歳年少の方だった。
本書を読み進めていくと、触れられるのはコッピやバルタリといったレジェンドの頃のお話だ。サイクリストである著者が、レジェンドの歴史を訪ねてサイクリングするマニアをいざなう内容だ。
期待していた内容と少し違ったけれど、面白い読み物だった
2023年11月19日
- ノー・カントリー・フォー・オールド・メン (ハヤカワepi文庫 マ 1-6 epi108)
- コーマック・マッカーシー
- 早川書房 / 2023年3月23日発売
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荒野に放置された弾痕の残る車輛と複数の死体、多額の現金と麻薬を見つけたら、そのまま放置して警察に連絡するに限る。現金を持ち帰り、再度現場を訪れるようなことをすると、地の果てまで追われることになる。
冒頭から物語に引き込まれ、ストーリーや登場人物の行動、セリフに引っ張られ、終盤まで連れていかれる。章立て冒頭の保安官のモノローグの印象が残っているうちに、主人公と追手が繰り広げる逃走劇が脳内に入り込んでくる。ストーリーが脳内に入ってくるのは、著者の作品『ロード』でも同じだ。その文体がそうさせるのだと思う。
主要な登場人物はすべて戦争経験者だ。オールド・メンの条件が戦争経験のように思うが、アメリカはどこかしらで戦争を継続しており、必ずしも古いタイプの男を指す条件ではないが、本書ではおおむねベトナム戦争経験者までをオールド・メンの対象にしている。2007年に本書の著者は80歳近い年齢であったことから、当然のカテゴライズだと思う。
古いこと、新しいこと、時代がかったこと、今時のこと、いろいろなことが掛け合わさって入り乱れてくるが、ストーリーが立ち整然と物語は流れていく。しびれるほど面白かった。
2023年10月31日
- ある奴隷少女に起こった出来事 (新潮文庫)
- ハリエット・アン・ジェイコブズ
- 新潮社 / 2017年6月28日発売
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250年前の出来事に胸が締め付けられるようだ。
奴隷制がどのように運用されていたのか、所有者(雇用者ではなく)との関係性等、当事者の記録である本書から伝わってくる。
少女を所有し意のままにしようとする所有者やその子供たち。嫉妬に苦しめられるその妻。意識のはけ口は残虐性や暴力なって奴隷を襲う。
奴隷制は奴隷の精神だけではなく、所有者の精神も破壊してしまうとは、当事者である奴隷少女の言葉だ。
2023年10月15日
- エベレストには登らない
- 角幡唯介
- 小学館 / 2019年12月4日発売
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登りつくされ大衆化したエベレストには、冒険家はもちろん登らない。あとがきに書かれている主旨の通りで、ごくもっともな反応だと思う。
そんな冒険家の日々のエッセイだが、内容は玉石混交だ。ほんとに書きなぐっているなと感じるものから、なかなかええ事書いてはるなと感じるものまで、いろいろだ。月刊誌のエッセイだもんな。がんばれ角幡さん
2023年10月1日
- 60歳からはやりたい放題 (扶桑社新書)
- 和田秀樹
- 扶桑社 / 2022年9月2日発売
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けっこうたくさんの気づきがあった。気づきというか、背中を押してもらうようなイメージだ。気楽に読める新書だが、なかなか心に届いた。
よっしゃ、60歳になったらやりたい放題するで!
サラリーマン男性は定年退職したら何をしたらよいかわからない人が多いって、本書にも少し触れられているが、どう過ごしてきたらそんな心境になんねん?会社行かんでええってことだけで、あれもしたいこれもしたい、あそこにも行きたいここにも行きたいって、妄想で頭がいっぱいや。
2023年10月1日
- カミーノ! 女ひとりスペイン巡礼、900キロ徒歩の旅 (幻冬舎文庫)
- 森知子
- 幻冬舎 / 2013年7月5日発売
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巡礼の道と言えば、日本ではまず四国のお遍路さんだが、世界に目を向ければスペイン・サンティアゴを目指す巡礼の道だ。著者は失業の危機と離婚の傷心を携え巡礼の道に立った。
無信心で土地勘のない当方は、巡礼旅の記録というより、単にロングトレイルのエッセイとして読み始めた。書かれている内容も宗教色は薄く、毎日の出来事を面白く読み進めることができる。
旅の顛末は十分興味深く面白い。
今日はどこに泊まろうか、明日はどこへ行こうかという旅に出たい思いが強くなった。漂泊の想いやまず・・・だな。
2023年9月17日
- アーマード 生還不能 上 (ハヤカワ文庫NV NVク 21-22)
- マーク・グリーニー
- 早川書房 / 2023年6月20日発売
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『暗殺者の・・・』シリーズのマーク・グリーニーが書く新しいシリーズが、本書『アーマード 生還不能』だ。何がうれしいって、新しい “シリーズ” ということは人生の楽しみが増えるということだ。うん、少し大げさだけど、的は外していない。
元陸軍軍人で、民間軍事会社で左脚を失って以来ショッピングモールの警備員としてくすぶっていた主人公は、あるチャンスを掴み、再び民間軍事会社の警護要員としてメキシコの麻薬カルテルの縄張りに分け入る。
想定外の攻撃を受けチームメンバーを減らすうちに、チャンスを掴んだと思っていたことが、実は巧妙に仕組まれて窮地に陥れられたことを知る。そこからの盛り返しが本書のハイライトだ。非戦闘員の文化担当要員の知識が、敵の識別や行動原理を解き明かし、チームは反撃の糸口をつかむ。決して華やかな戦闘ではないが、泥臭くも窮地を脱する。
さあ、さっそく興味は次回作だ。チームは維持されるのか?奥さんはどんな立ち位置に?お楽しみは尽きない。
2023年9月10日