日本軍「慰安婦」にされた少女たち (岩波ジュニア新書)

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  • 岩波書店 (2013年11月21日発売)
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慰安婦に対する日本政府の発言への欺瞞。朝鮮人の欺瞞。どちらも、真実を掠りながら、嘘や記憶違いや我欲が混ざり、折り合えない。どちらかに軍配を上げる必要はないが、事実関係のみを整理すれば、見えてくるものがある。

その意味で、本著は、重要な書物だ。

先ず、「ユミ、元気にしてる?かにた婦人の村に行ってきた」と、少女の手紙調で始まる。

なぜ?

子供に読んで欲しいから。つまり、自ら知識を蓄え欺瞞に気付く前の年齢に、刷り込みたいから。正々堂々、日本政府の見解やその支持者へ反論せず、そのような論法を取る。怪しい。しかし、戦後引き上げ時に関連文書を焼き捨てられた上に、連行された側には証拠などないだろう。従い、このような論法を取るしかなかったと、見逃す事とする。

しかし、徐々にこの論法が崩れてくる。ユミが、男の子にイタズラされた話。中学生の設定だが、このイタズラの話を親にも友達にもしなかった。理由は、「しっかりしない子とレッテルをはられそうで」。これは、慰安婦が名乗り出た勇気を強調すべく入れられた文章だ。しかし、名乗り出ないのは、「恥ずかしいから。世間に色眼鏡で見られたくないから」が正解で、しっかりしていると見られたいなどというのは、まさに老人の想像だ。

つまり、本著は、フィクションの上で史実を語ろうとするものだが、主観と客観が混濁してしまっている。そして、ノンフィクションをそのような書き方で表現するには、政治的作為が入り込むため、非常に残念な表現手法だ。子供同士が手紙をやり取りし、その中で慰安婦を勉強していく。実はこれは、進研ゼミなんかで取られる広告手法だ。なぜ、そんなことをする?

城田すず子にしても、親の借金返上のために、承諾書を提出し、売春行為に及んでいた。彼女は自らを奴隷のようだった、とするが、これを、朝鮮の主張する性奴隷のイメージと巧みに重なるように引用する。

慰安婦の強制性を主張する側が、こんなに力不足では、いつまでたっても日本政府の主張を覆せず、個人賠償も得られない。戦うと決めたからには、勝たなければいけないが、勇気をもって発言した人たちに対し、あまりにも頼りない。従い、いろんな事を捏造するが、子供の喧嘩のようで、全く逆効果。

流言からの引用も酷く、女郎を買ったのか無償なのか、文章により異なる。死と隣り合わせ。自らの身体を賭して国の家族を守ろうと戦った軍人。若い肉体には欲もあったろう。それを慰めんとした、大和撫子。性への嫌悪感や、一部の軍人の狼藉が、プロパガンダに利用されている。本著は、中国が成立した当時の国民党を支持しているのか、共産党を支持しているのかさえもハッキリしない。日中戦争が理解できていないのだ。

残念ながら、著者は、何かを反省したがっているが、自らが犯した問題を理解できていない。まるで、人ごとだ。

世界恐慌が女性の身売りを余儀無くさせる状況をつくり、白人に蹂躙されたアジアにおいて、シナは、内戦と排外主義を繰り返し悶え、日本は帝国主義の中で覇を競っていた。慰安施設はあった。それは今も存在する米軍のための風俗と変わらない。そこに事件性はあっただろう。問題は、無理に連行されたか否か。これも、当時なら、そういうケースもあっただろうというのが私の立場だ。しかし、発言の殆どが稚拙で、妙な団体が政治利用したせいで、あり得ない主張になってしまっている。

尚、本著は根拠を示さず、南京で30万人の虐殺があったと、共産党の発言を採用している。この無責任な発言に嫌悪感を持つ人は、読まない方が良い。中国語を解さないのか、三光作戦の、光の語用も誤っている。

つくづく。組織に属せば、立場を選ばざるを得ない。立場を選べば片方の主張に反論せざるを得ない。組織には、組織の論理、利害がある。そのうち、組織の利害が、属した自らの利権に変わる。そうなると、もはや組織同士の対立では、問題となる事案は折り合わない。違う角度の利権がうまく機能するか、この事案に主張なき別の指導者同士が手を握るような解決策しかないのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2014年8月3日
読了日 : 2014年8月3日
本棚登録日 : 2014年8月3日

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