完全版 アンネの日記 (文春文庫) (文春文庫 フ 1-2)

  • 文藝春秋 (1994年4月1日発売)
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感想 : 44
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アンネの日記破損事件があった時、この書物について認識していたものの、何が争点なのかを理解できなかった。戦時中、ナチスホロコーストのシンボリックな図書として、アンネの日記はあまりにも有名である。しかし、きちんと目を通した人は少ないのではないか。ナチスの目から逃れ、隠れ家で生活するユダヤ人家族。閉鎖空間での制限付きの住まい。しかし、これ自体は、強制収容所の記録であるフランクル著「夜と霧」とは雰囲気が異なる。家族関係の葛藤や、一人の少女としての悩みを抱えながらも、幸せな生活。悲劇は、日記が途絶えた後の事だ…。

これらが捏造との説がある。破損事件もこの説に関係する。今までに数度、この陰謀論は、裁判沙汰にもなっている。筆記に用いられたインクの製造が、日記が書かれた時代よりも新しいという説だ。

ある主張を世界に流布するため、プロパガンダは行われる。それを棄却するために、カウンタープロパガンダが起こる。有耶無耶にするだけでも、活動には、効果がある。世界の歴史認識では、このような活動が多く、そのためのロビー活動が蔓延している。事実か否かは、重要な事だ。善か悪かを裁く事で、賠償を得、共感を得る事で世論を味方にする。民主主義においては、共感こそ力であり、共感においては、ロビー活動こそ重要だからだ。従い、読書とは手離しで行うのは危険なのであり、時には意見を保留することも大事である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年5月11日
読了日 : 2014年5月11日
本棚登録日 : 2014年5月11日

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