日本の難題をかたづけよう 経済、政治、教育、社会保障、エネルギー (光文社新書 590)

制作 : 荻上チキ  SYNODOS 
  • 光文社 (2012年7月18日発売)
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学究の先端という事ではないが、アカデミックな講義を分かりやすく解説する内容。複数の講師の中では、最も安田洋祐氏のプレゼンが読みたくて手に取ったが、期待通りの内容。

同氏のセミナーでは、マーケットデザインが解説される。マーケットデザインの実例としての「周波数帯オークション」「研修医マッチング」「腎臓交換メカニズム」「学校選択制」など、事例を示しながら、社会システムや市場を設計・修正する機能を持つマーケットデザインの可能性を素人にも分かるように解説する。

読み続けると、時々グッと難しく感じる瞬間があるが、まるで「痛みを感じたら言ってね」と事前に声がけする歯医者のように、これから難しくなるからねと、行き届いた進行。で、ゲーム理論から一気にマスキンの定理に入る。マスキンの定理は、恐らく安田洋祐から聞かないと理解できなかっただろう。

定式化されたゲームのナッシュ均衡が社会目標と一致する時に、「ナッシュ遂行される、ナッシュ遂行可能」と表現する。ナッシュ均衡の説明も、分かりやすい。そこから、ソロモン王の知恵についての例話により、本当の母親が見抜けられるか否かに挑戦する。結果、偽の母親の戦略的行動を取れば、真偽不明に陥るジレンマがあるため、不可能という結論。不可能である事の証明コストを減じたのが、ノーベル賞受賞者であるマスキン。

正しい母親を見抜くためには「マスキン単調性」を満たす必要がある。これを満たさねば、社会目標は理論的に達成できない。「マスキン単調性」とは。流石に難易度が上がるが、理解できない程ではない。

他にも選挙問題点をデータで可視化するセミナー、社会学における引き篭もり問題など、一つ一つが広がり過ぎず、浅くならない範囲。非常にためになる良書。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年8月7日
読了日 : 2022年8月7日
本棚登録日 : 2022年8月6日

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