レゴ 競争にも模倣にも負けない世界一ブランドの育て方

  • ダイヤモンド社 (2021年12月2日発売)
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「レゴ」という会社の事がよく分かった。確かに、似たような玩具はあるのだがレゴには特別な魅力があるし、これじゃなければダメ、という感じがする。ネットでは廉価版も売っているが、全く好ましくない。機能面なら事足りそうだが(実際には、堅牢さが脆弱)、本家の圧倒的信頼感には勝てない。

先ずはその廉価版に対する誤解から。私はこれを長らく中国の偽物で、違法な存在だと思っていた。しかし、レゴブロックの基本特許は1980年代から各国で切れていて、廉価な互換性ブロックの販売は許容されている。それでも本物には勝てない。なんか安っぽいのだ。

競合他社は、バービー人形の米マテル、モノポリーの米ハズブロなど。しかし、これらよりも、テレビゲームの登場によって、レゴが破綻の瀬戸際まで追い詰められていた。少なからず、模倣品に奪われたシェアもあったらしい。

変わらねば、という事で色々手を出す。レゴランド的なアミューズメントパークやアニメや映画、スーパーマリオとのコラボ企画。中でも、ファンのアイデアを製品化するプラットフォーム「レゴアイデア」は、ファンの作ったレゴ作品を募り、人気投票によって選別して製品化するユーザイノベーションの仕掛けとして画期的だった。投票の時点で希望価格も聞いておくことで、消費者が期待する価格帯も把握できる。

昨今のレゴの売り上げを牽引している主力製品はプレイテーマと呼ばれるシリーズ。単なるレゴブロックではなく、テーマごとに異なる世界観を訴求し、そこに引き込むことで結果的にレゴのファンになってもらう。機能ではなく、ストーリーで売ると言うマーケティング手法の実践。

他にも、社会人向け教育プログラムであるレゴシリアスプレイ。これはレゴブロックを使うことで共通の言語がチームに生まれる。チームビルディングに必要なのは、メンバーの考えを明らかにして互いに理解すること。組み立てる対象となるのは、抽象的なイメージやアイデンティティー。モチベーション、リーダーシップ、ビジョン、一見トライ所のない概念をブロックを組み立てながら形にしていく。作り、説明し、共有し、再評価をする。レゴシリアスプレイは現代版の箱庭療法。レゴシリアスプレイ認定のファシリテーターの資格があり、2008年当時は日本人では10人未満だった。とある社員の人たちがワークショップで取り組むのを(オブザーバーで)見たことがあった。アレか、と。

コモディティー化を脱するには変化し続けるしかない。玩具の王様のようなレゴですら、試行錯誤を繰り返している。ビジネス書として、学びの多い一冊。付録の工場見学ルポも秀逸。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年7月7日
読了日 : 2024年7月7日
本棚登録日 : 2024年7月6日

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