孤独とつながりの消費論 推し活・レトロ・古着・移住 (1037) (平凡社新書)

  • 平凡社 (2023年9月19日発売)
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本書一冊が、三菱総合研究所「生活者市場測システム」アンケート調査に基づくその分析を書いている内容であり、興味深い結果だとは思うが、その結果以上の考察や新たな情報という観点には乏しい。調査自体は2023年1月に、 調査対象「20~69歳1500人」に対して行われたもの。

結果で特に面白かったのが、推し活と宗教について、孤独を感じる人がのめり込みやすいという事。この調査は、年齢以外に年収なども合わせて確認しているので、お金のない孤独とお金のある孤独の傾向の違いなども興味深い。孤独が宗教にのめり込みやすい、というのは何だかそのまんまの結果という気もする。お金をかけた結果、尚孤独なのか、過去に孤独だと感じていたから、宗教関連にお金をかけたのか、という点は分析が無い(というよりもアンケートでその時系列を確認していないという事か)。つまり、宗教は結果的に孤独を救うのかという点は、明かされない。ちなみに、ここでの宗教消費とはお守りを買うとかそういう事だとされるが、お布施みたいなものも含むのだろうか。

推し活に関してはそれなりにお金を持っている人がお金をかけやすいという傾向もあるが、これとクラウドファンディングのようないわゆる「応援消費」は、金銭的に余裕がある層だけではなく、お金がなくてものめり込むというのは面白い。貧困ビジネスではないが、低収入で自らの価値を認められないような仕事をさせられ、日常に疲弊。出会いを求める余裕もないという人が孤独なのだろうが、それでも誰かを応援する事で昇華しているのだ。健気なものである。

尚、孤独か否かは主観的なものであるので、私のような人間は、1週間程度人に会わなくても別に孤独を感じないし、応援消費もしない。というかスポーツにしても音楽にしても芸能にしても、ファン精神というものがなくなっているので、応援消費そのものが殆ど理解できない。自分を基準にすると、相手がよく分からなくなるものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年8月2日
読了日 : 2024年8月2日
本棚登録日 : 2024年7月30日

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