目に見えぬ侵略 中国のオーストラリア支配計画

制作 : 山岡鉄秀監訳 
  • 飛鳥新社 (2020年5月29日発売)
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恐ろしいのは、侵略、弾圧、暴力であり、今当たり前にある自由を奪われる事である。それを防ぐために国家に属し、税金を納めている。つまり、個人の安全保障を国家に委ねる契約形態が国家機能の一部。しかし、そこに個人の安全保障を毀損するような中国人の侵略が進む。本著に度々出てくるゼノフォビア(外国人恐怖症)のような生温いものではない。明らかな国家転覆による安全侵害の予感だ。

民主主義者は共産主義に参加出来ないが、共産主義者は民主主義に参加できる。こうした非対称な政治制度を利用し、早くから中国は各国に自国民を送り出し、資本や教育、政策に口出しを始めている。国防動員法により、海外にいる中国人は中国の利益によって動き始める。オーストラリアだけではない、当然、日本にとっての脅威だ。

平和ボケしていて、日本企業には数多くの中国人がいる。国家はしたたかに、中国にとって有利な法律を敷きながらも鈍い日本企業は対応が遅い。一緒に働く中国人は信用できますか。勿論、それが差別に繋がる事も注意しなければならないが、そうした問題も含めて、中国は人権を重視しない。

中国における戦略の基礎的な考え方に「百年マラソン」という言い方があるらしい。民主主義と異なる点でのもう一つの恐怖はこれだ。時の支持率を意識して、ようやく政策を通すような民主主義的手続きでは到底追いつけないスケール。つまり、党は当然続くものとして、長期ビジョンで自国民を海外派遣して他国を操作する政策が可能となる。

そもそも中国共産党なんて、軍閥同士の内紛を勝ち得た革命軍だ。軍の論理は常に軍事力による影響力の維持と拡張にあるのだろう。ソ連と不仲なタイミングで友好条約を結び、市場開放が経済発展を齎したが、結局その後直ぐに、天安門で人民に銃を向けたではないか。デモと偽り、日本企業を襲撃したではないか。軍閥と平時の理屈で対話してはいけないし、出来はしないだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年5月8日
読了日 : 2022年5月8日
本棚登録日 : 2022年5月4日

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