晴れの雨。 (コバルト文庫)

著者 :
  • 集英社 (2004年2月3日発売)
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本棚登録 : 218
感想 : 25
5

カラス~に登場した光久の過去が気になって手に取りました。
大体の物語のアウトラインが分かっていても瑞々しくて青くて痛くてまっすぐすぎるくらい純粋で、読んでいて苦しくて仕方がなかった。
朝丘作品全般を通して言える事ではありますが、恋愛の綺麗なだけではない部分や人間の狡さ、傲慢さ、弱さを容赦なく抉りだしてくるので地雷な人はとことん地雷なんだろうなと思います。
あと、分かりやすいハッピーエンドでは無いところも。
宮城のブレないクズっぷりはいっそ清々しいですね。(8年経っても全く懲りて無い所も……)
そんなクズ教師に振り回されて恋に恋する自分に酔っていただけだと気づいても、彼に恋をした時間そのものはかけがえのない物で、別れの最後の夜を共に過ごす光久の純粋さは嫌いにはなれないなぁと思いました。

全ての出会いも経験も、その中で起こした間違いや苦しみも、眩暈がするようなキラキラした幸福な時間も、癒える事のない深い痛みも、全ては皆、人が成長する為の、かけがえのない人に出会う為の大事な過程なんだと素直にそう思えるお話でした。
迫りくる死を常に意識しながら、その淵で自分を照らしてくれる光をやっと手にした木生も、自分の愚かさを知り、感情の渦に振り回されながらひたむきにまっすぐ人を愛する喜びを知り、苦しみを乗り越えて成長した光久も眩しくて純粋でキラキラして、胸につまされます。
(光久の親友も含めて、高校生たちの純粋さが一際煌めくからこそ不倫教師宮城のクズっぷりが引き立ちますね……)
作品を通して、人を愛する事について真摯に向き合った姿勢に胸打たれました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年6月15日
読了日 : 2015年6月15日
本棚登録日 : 2015年6月15日

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