水車館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

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本棚登録 : 3434
レビュー : 323
著者 :
帽子空間さん ミステリ   読み終わった 

ゴトン、ゴトンと三連の水車が動き続ける館、白い仮面をつけた館の主、塔に幽閉された美少女、回廊に飾られた幻想的な絵画、「幻影群像」という幻の絵・・・。

完璧な設定。本格ミステリでかつその様式美で幻想をかねそなえた小説。新装改訂版で再読なんだけれど、自分の読書遍歴が本格ミステリから幻想小説寄りになっていった原点は、もしかしたらこの作品にあったのかもしれない。というより綾辻行人という作家そのものにあったのかもしれない。

有栖川有栖の解説にも書いてあるが(これがまたすごい。ミステリジョッキーや新本格謎会、その他座談会をいくつも読んでいるが、綾辻と有栖川は永遠のライバルであり良きパートナーでもあるんだなあ、と改めて思った。)綾辻行人にとっての本格とは、つまり「雰囲気」だと。まさにこの作品がその裏打ちとなっている。新本格ムーブメントがひと段落ついてその後、本格はトリック重視派とイリュージョン・カオス派(清涼院や舞城か?)に分かれていったが、幻想的あるいは様式美を持った作品は少ない。ある意味、異様な館で起こる殺人事件なんてものは前時代的で手あかにまみれた設定なのかもしれない。金田一少年やコナン君が大ブームになって、あれはあれで読んでいておもしろいところもあるけどなんというか手品を見せた後にタネを明かして、なーんだそうだったのか、で終わってしまいもったいない感じがする。それは漫画と小説というメディアの違いかもしれないが、綾辻行人の館には雰囲気がある。全体を暗雲のように包み込む陰鬱な雰囲気。登場人物たちが館に到着したときや事件前にくつろぐひととき(これがまたファンにはたまらない。この水車館でもあるが、実際にこんな館があって観光客として泊まれるならこれほど魅力的な事はない。もちろん殺人なしで!)や館内見取図を眺めながら目には見えない館を空想したり・・・。

そんな館の雰囲気を堪能できる館シリーズ。これからぞくぞく出るであろう新装改訂版が、綾辻行人の新刊並みに楽しみだ。

レビュー投稿日
2010年5月16日
読了日
2010年5月16日
本棚登録日
2010年5月16日
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