『年をとったワニの話』のあやしいおかしさに、翌日は発熱しつつも、へのへのもへじ文庫で借りてきた2巻を読んでしまう。あいかわらず、ショヴォー氏のお話はばかばかしく、話の展開は私の想像の範疇などかるーくこえて、「そういくか!」とはっとさせられる。
表題作は、子どもを喰ってしまうブナの木の話。通りかかった子どもを喰ってしまう木。しかし、一度に喰えるのは3人までなので、子どもが4人以上通りかかったときは、ぐっとガマンするという木。なぜか時々子どもが消えてしまうけれども、誰もなぜだか分からない。そして村人は、なぜか炭焼きがあやしいと断じて、炭焼きを皆殺し。それでも子どもが消えるので、こんどはオオカミがあやしいと、これまたオオカミ皆殺し。それでも状況が変わらないので、森の動物を次々と皆殺し。(というような、ちょっとぎょっとするようなコワイ展開がショヴォー氏の話にはたいへん多い。)
ある日、木が子どもを喰うところを偶然見かけた木こりが、木にやられそうになりながらも、木を切り倒す。そうすると、ちっこくなった(ポケットにつめこめるくらい)今まで喰われた子どもがわらわらと出てくる(というのが文庫版の表紙カバーのイラスト)。
その他の収録作もおかしい。とてもなまいきで親のいうことを聞かないヘビの子の話。あまりになまいきな子ヘビに、お母ちゃんヘビは平手打ちをくわそうとした。それをかわして逃げる子ヘビ。それを追いかけるお母ちゃんヘビ。まるで安珍清姫のごとく、子ヘビと母ヘビは、あんまり遠くまであんまり長い時間逃げに逃げ、追いかけ続けて、とうとうどちらも手足が根元まですりきれてしまう。
話はさらに続き、平手打ちをくいたくないばかりに(といって、手足がすりきれてなくなった母ヘビは、いったいどうやって平手打ちをくわすのか?)、子ヘビは逃げて逃げて、いいところを見つけたとばかりにゾウの鼻の穴へ入りこみ、ゾウの脳みそのわきに住みついた。そのヘビの知恵で、ゾウはけものの中でいちばんの知恵者になったという話をきいて、ルノー君はこんなことを言う。
「じゃあ、パパ、両方の鼻の穴に、一ぴきずつ、ヘビを入れれば、もっと頭のいいゾウが、できるんだね」
ルノー君のこのリアクション。そんなふうには、私はとても考えられなかった!
最後の「オオカミとカメの話」は、ルノー君が、お母さんがこしらえた話を、ショヴォー氏(つまり父)にしているもの。これまた、父ちゃんがつくった話に劣らず、シュール。
そして、ルノー君はまた父ちゃんをくさしている。「パパって、思ったほど、頭よくないんだね」
文庫版2巻の巻末にはルノー君の弟、ショヴォー氏の4人の息子のうちの末っ子オリヴィエさんが、父と兄のことを語ったインタビューが収録されている。ショヴォー氏は、最愛の息子、自分のお話の聞き手だったルノー君を12歳で喪ってしまうのだ。
(10/2了)
- 感想投稿日 : 2012年10月12日
- 読了日 : 2012年10月2日
- 本棚登録日 : 2012年10月2日
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