第二の性 1 決定版 (新潮文庫 ホ 4-10)

  • 新潮社 (2001年3月1日発売)
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感想 : 9
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本当はボーヴォワール全集で読んだのだが、ブクログで見つからないのでこちらで登録。

とりあえず第一部のみの感想。
冒頭から有名な一文、
「人は女に生まれない、女になるのだ。」
"On ne naît pas femme : on le devient."

人間"homme"とは男"homme"のことであり、女は男の下位に位置する性、二次的な存在として意味付けられる。(男性と去勢体の中間的存在、とは初っ端からなんとも辛辣な表現)これが本書の題名ともなっている「第二の性」の意味するところである。
第一部では、人間の子供(メス)がいかにして「女」になっていく/されていくのか、セックスからジェンダーへの変遷がいかになされるのか、その過程を少女期から時系列で提示している。小説や手記などからの引用が多く挿入され、実際に様々な境遇の女たちの例を引きながら議論が進行する。心理学的な視点からの分析も。

興味深かった指摘として、「女としての生は人間としての生と矛盾する」というものがある。男が一個の人間として自らの生を生き抜こうとする主体的な在り方を目指すなら、それは彼の性別に求められる生き方と何ら矛盾するものではない。自らの能力を生かして道を切り開き、望むもの(富であれ、名声であれ、はたまた伴侶であれ)を手に入れる。これに対して、社会が女に要求する生き方というのは全く逆のものだ。それは自我を抑圧する生き方、男という他者によって幸福が与えられるのをただ待ち続ける受動的な生き方だ。この事実により、多少なりとも一個の人間として生きようと望む女は、人間としての自分と女としての自分の間で葛藤に引き裂かれるのだ。と。

もう一つ、おっ?と思ったのは、多くの女が「貶められている」現状を甘んじて受け入れているという指摘。彼女らにとっては女権解放なんぞはどうでもよく、たとえ二級市民扱いされようとも自らの力で勝負しなくて良い環境が心地よいのだ、と。女性である筆者がこの点に自覚的であることには好感が持てた。

まあ、全体的にコトを単純化しすぎな気がしないでもないが(議論の性質上「男」「女」とラベル貼って論じなきゃならないんだからしょうがないけど)男女を問わず一読の価値あり、だと思う。よのなかの構造の一端がわかるかも。1949年に書かれた本だが、内容は全くといっていいほど古びていない・・・残念なことに。本書を読んでから周囲を見回してみれば、いかに状況が変わっていないのか痛感できるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文科学
感想投稿日 : 2011年11月30日
読了日 : 2011年11月29日
本棚登録日 : 2011年11月13日

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