西太平洋の遠洋航海者 メラネシアのニュー・ギニア諸島における、住民たちの事業と冒険の報告 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (2010年3月11日発売)
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感想 : 13
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「西太平洋の遠洋航海者」というこの本のタイトルが示すのは、ポリネシアの島々の異なる部族の住民たち。

彼らは、特別高価でもなく、実用性もたいしてない装飾品を交換し合う、「クラ」という儀式を行います。
その儀式のために、頑丈なカヌーを作り、そのカヌー作りのために技術者を支え、必要な木材を調達すべく森林を管理している島の人々の生活は、このクラが大きなものを占めていることがわかります。この儀式で交換されるのは物質的な価値ではなく、交流という社会的価値。
「経済学」のスタートラインはこのような贈与のかたちだったのかも。「なぜ人は交流するのか」「なぜ外に出て行くのか」その根源的な問いへのヒントはあるでしょう。

もうひとつ、この本の中で非常に重要な要素が「呪術」
いかがわしく思えますが、「おまじない」とでも言えば多少マシでしょうか。カヌー作りのあらゆるステップ、農作業、船出、あらゆるタイミングで呪術の出番は来ます。
きっとこれには宗教または科学の原点があるんだと思います。正直理解は追いついていないのですが、自然の中に、人々の行動の中に内在する「不安定さ」を説明する呪術は、単に「未開文化」といえない要素が含まれていると思います。

難しいところもありますが面白いです。「贈与」を考える上では必読でしょう。巻末の解説で中沢新一が言うように、経済の形が変わってきた時代にこそ、読まれるべきなのかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人類学
感想投稿日 : 2014年11月25日
読了日 : 2014年11月25日
本棚登録日 : 2014年10月16日

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