浮世の画家 (ハヤカワepi文庫)

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本棚登録 : 806
レビュー : 108
制作 : 飛田 茂雄 
raulreaderさん 小説   読み終わった 

第二次世界大戦前後の日本・東京を舞台に、画家の人生を描いた物語。
「遠い山並みの光」とよく似た雰囲気を感じました。

戦争によって激変した時代の犠牲者とも言える画家たち。
主人公は戦前に新しい形の芸術とその社会への影響を求め、師を「浮世の画家」と呼び、袂を分けた画家。そして戦中は名声を得ただけでなく、反体制的な画家仲間や弟子を期せずして困難な立場にも追い込んだ経験を持つ。
その彼が、戦後は一転して社会から浮いた存在となる。かつての弟子だった画家の中には、彼を批判するものもいるけれど、なにより鮮明になるのは、結局彼は一介の画家に過ぎず、戦争前後の罪を問われるほどの立場でもなく、忘れられている、ということ。そのことが主人公である「わたし」から直接は語られないものの、随所に描かれる。まさに「浮世の画家」となった姿。

主人公の口からは「信念」という言葉がよく出てくるも、何を示すのかわからないまま、時代に流された人々が容易にそういった言葉を使って、己を奮い立たせていたんだろうな、と思います。
とても狭い世界に生き、世間を知らぬまま、その世界の名声にすがる、寂しい画家の淡々とした哀しい小説。

レビュー投稿日
2015年12月9日
読了日
2015年12月5日
本棚登録日
2015年12月6日
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