これはですね、いい話といってはなんですが、読んでおもしろいです。
「労働者の悲惨な境遇を描いた描いた作品」だなんて解説がいかにも似合いそうで、たぶんそんな表面的な評価も実際あるんでしょうが、どうみても違いますね。作者は楽しんで書いてますね。最後の方の「恋人の着ていた福の切れ端をプレゼントします」なんて、悪趣味もいいところですが、わかってやってますよね。
労働者の苦難を世に訴えるという立場をとりつつ、ある意味それを隠れ蓑に、作者は青年とその彼女を、話を面白くするためにいいように料理しています。いいですね。イデオロギーに捉われずにそれができるからこそ作家であり、こういういい話が書けるわけですね。作者の作家としての本能が、虐げられた労働者という題材をうまく使って創りあげた素敵な作品です、と言ってしまっては、あまりに芸術至上主義に聞こえるでしょうか。
しかしそうでなければ立派な作品として残らないし、誰も読まなくなるわけです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
本 :小説
- 感想投稿日 : 2020年4月26日
- 読了日 : 2013年2月23日
- 本棚登録日 : 2020年4月26日
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