やがて哀しき外国語 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1997年2月14日発売)
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本棚登録 : 3181
感想 : 215

「海外生活を始めてしばらくした頃に読んだらいいよ」と勧められ日本から持参しました。90年代のエッセイですが、"アメリカ生活あるある"は大筋で今も同じような感じで、うなずきながら楽しめました。
そして何よりあとがきに記された文章にとても励まされました。
以下要約。

---外国で暮らすことのメリットのひとつは、自分が単なる一人の無能力な外国人、よそ者(ストレンジャー)でしかないと実感できることだ。差別されたり、あるいは部外者として理不尽な排斥を受けたりする目にあうのは決して無意味なことではない。たとえ弱者としてであれ、無能力者としてであれ、そういう風に虚飾や贅肉のないまったくの自分自身になれることができる(あるいはならざるを得ない)状況を持つというのは、ある意味で貴重なことではあるまいかとさえ感じている。
自分にとっては自明性を持たない言語に何の因果か自分がこうして取り囲まれているという、その状況自体がある種の哀しみ似たものを含んでいる。そして日本に戻るとまた自分が自明だと思っているものは、本当に自分にとって自明のものなのだろうかと不思議に哀しい気持ちになる。僕らはみんなどこかの部分でストレンジャーであり、僕らはその薄明のエリアでいつか無言の自明性に裏切られ、切り捨てられていくのではないかという懐疑の感覚は、一人の人間としてずっと抱えて生きていくことになるだろう---

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年4月5日
読了日 : 2015年4月5日
本棚登録日 : 2015年4月5日

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