村山さん、宇宙はどこまでわかったんですか? ビッグバンからヒッグス粒子へ (朝日新書)

  • 朝日新聞出版 (2013年4月19日発売)
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2013年刊行。著者は東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構機構長。なお聞き手高橋は朝日新聞編集委員(元同社科学部長)。◆タイトルどおり、素粒子物理学をもとにした宇宙論が主題だが、聞き手が東大理学部⇒朝日新聞の科学畑という遍歴を持ち、村山への問いかけの秀逸さが他書との差別化に。勿論、著者の軽妙かつ易しい語り口は健在。例えば①余りに短時間のため借りたエネルギーが返せなくなったインフレーション。②自然に降参する真の科学者は謙虚。③理論も(当然実験も)間違える。歴史的にもポンポン間違えている。
④経験していない現象に直面すると科学者は語るべき言葉を失うが、そこで使えるのが俗にいう言語ではなくて、数学という言語。⑤1電子二重スリット実験で縦縞・干渉縞が見えるのは、電子が「その電子自身に干渉」している。⑥ヒッグス粒子が他の素粒子(その結合たる原子・分子も)の重さを生み出すのは、ヒッグス粒子が集合した場が水飴状の如き存在で、他の素粒子の動きを鈍らせる(仮)。等々、秀逸な比喩ばかりか、科学者としての真摯な姿勢も感得できる。◆テーマは、暗黒物質・暗黒エネルギーは勿論。
不確定性原理の精密化(ハイゼンベルグ→名大の小澤正直氏の不等式へ)、ヒッグス粒子発見(仮)(高い確率でヒッグス粒子を発見したと言えるが、追試と他種の存在はまだ)といった新奇なネタから、ニュートリノ研究の今、暗黒エネルギー研究の今(一挙に多数の銀河を観察し分光化)や宇宙開闢の前の存否(ホーキング博士の唱える虚時間?)などにも及ぶ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月24日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月24日

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