重力の井戸の底で 機動戦士ガンダムUC(6) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2010年9月25日発売)
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感想 : 32

 UCシリーズ6巻。地上に降り立ったバナージたち。しかし、彼らは、つまり、バナージ、マリーダ、リディ、そしてミネバは、夫々バラバラに、異なる場所で想いを重ねていく。彼らが収束していく未来はあるのか。特に、パマージとミネバは…。連邦政府の首都、そして、シャアの演説があったダカールとその周辺を舞台に物語は政治色を強めていく。その反映だろうが、ガンダムシリーズのあの人が、多くのニュータイプたちを見続けたあの人がラーカイラム艦長として満を持して登場する。停滞感が感じられた前巻とはうって変わったスピーディさ。
戦うことの意味を、無意味さを噛みしめるバナージ、そしてリディ。分別くさい大人、頑なに過去に縛られる大人に反発するバナージ。彼の転機の巻であると同時に、大人に反発し続けるガンダムの主人公らしさが前面に出て来た。そして、何より素晴らしいと思うのは、ガンダムシリーズ(というよりもΖガンダム)における「ダカール」の意味・価値を十分理解して、作品に反映している点だ。UCガンダムのダカール出撃シーンが、どことはなくTV版Ζガンダム最終回ラストのΖを彷彿させる。
ダカールは、人口増加による地球環境悪化の典型として、地球連邦政府の腐敗と強権の象徴として、Ζガンダムにおけるシャアの演説の舞台としてなど様々な意味づけが可能である。本作は、その輻輳する舞台を、都市・砂漠などの情景を詳細に描写することで、ダカールの舞台装置としての意味や意義を際立たせているのだ。これは映像表現では難しい。小説だからこそ可能になる。ガンダム世界の拡充に寄与したといって過言ではない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2017年1月22日
読了日 : 2017年1月22日
本棚登録日 : 2017年1月22日

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