狼と香辛料〈10〉 (電撃文庫)

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本棚登録 : 1301
レビュー : 63
著者 :
制作 : 文倉 十 
reinouさん 小説   読み終わった 

 宗教勢力への課税。世俗権力が絶対に実施したい政策だが、世俗対宗教という対立がある中、後者が優勢な時代に実施することは不可能だ。
 ところが、宗教の持つ神通力が薄れ、あるいは金銭的に窮すると、この政策が議論の土俵に上ってくる。
 この、近世期から近代国民国家への移行期に多く議論されてきたテーマを背景とし、ホロの故郷の土地比定と滅亡譚を巡る探求行を重ねていく。

 本巻ではハスキンスの立ち位置が見事だ。ホロよりも遥かに年輪を紡いできたと目される彼。このように齢重ねることは決断の回数が増していくことに他ならない。それは苦みを生み、これまでの生き方を否定する決断である場合も多いだろう。
 一方、逆に、幸せだ、楽しいと回顧できる場合も少なくないはず。
 その先人の記憶と想いを誠実に受け止めてこそ、彼らの知恵を得ることもできるに違いない。

 これを成し遂げたロレンス、先人より知恵と経験と知識を授けられることになる。かつての我が身を想起させるホロの行く末を先人が気にかけているからに他ならない。ロレンスはどう御していくのだろうか?

 さて、ハスキンスとまではいかなくとも、ロレンス一行も年齢を重ねていくことさえ守れば、ずっと物語を続けることは不可能ではない。
 しかし、本作は旅の終わりを措定しているのだろう。「熊」「ヨイツ」「ロレンスの店舗」。それらが暴かれ、あるいは実現した時。
 個人的には、そこから先の結論は一つだけのように思うのだが…。これが男女の機微を判っていないと言われる所以か。

レビュー投稿日
2016年12月14日
読了日
2016年12月14日
本棚登録日
2016年12月14日
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