2002年(英訳本2000年?)刊行。
ヒトラーと最期をともにした妻(もっとも長期間は内縁関係であり、さらに真に内縁との内実あるかは?である)エヴァ・ブラウンの日記と、発見経緯を踏まえた日記の信憑性に関する英訳者の見解を付した書である。
とはいえ、本書が呈示する英訳者略歴の紹介の中途半端さには困ってしまう程だ。
さらに「日記」と銘打つが、その日記の日付を見ると、相当長期間の空白があって、そもそも本書が日記の体を成しているかは??である。
そういう前提の上で叙述内容を検討すると、大きく二つの方向性に区別できそうだ、それは、ヒトラーの身辺(つまり二人きりの模様も)模様と、彼とナチス・国軍上層部との関係である。
前者は、例えばヒトラーの頻繁な不眠症が語られる件に代表されるが、より具体的、有体に言えば寝物語の逸話である。
もっとも、それは睦言を語り合うという大人の寝物語ではなく、エヴァがヒトラーに本を読み聞かせ続けるという、アッとたじろいでしまう内容である。
しかも、ここで記述されるのは、読み手の私を気持ち悪くさせる書を、ヒトラーが読み聞かせ本に選んだ事実である。なおかつ、夜中から朝まで読み聞かせは止めらせられはしない。
本書には、これに対するエヴァの内心の辟易ぶりも表出されている。
後者についていえば、まず、ヒトラーが占い師を利用するオカルティック嗜好に塗れている点だ。これは「ヒトラーの秘密図書館」等でも伺える実像ではあるので、さほど新奇なネタとは言い得まい。
あるいは、ヒトラーの対人対応についてであるが、彼は相手に対して抑圧的態度を取る反面、臆病さも滲ませた神経質な一面も存在しているようだ。
加えて、ヒトラーが自らを称して
「(私は)天才的政治家ではない。天才だ。政治家を選択したから天才的政治家と呼ばれるのだ」
という主旨の、こちらの爆笑を催す台詞くらいが印象に残るくらいか。
さて、エヴァの日記の偽書性の如何に関して、少し触れてみたい。
本書の内容は、確かに、他書で指摘されたヒトラー像と被る部分はある。
しかし、本書で書かれている内容だけを見ても、日記がエヴァの手によるものかどうかの信憑性、偽書如何、さらに虚偽内容が含まれるとすれば、その範囲については、確答・確信するだけの材料はない。真偽不明という範囲しか言えないだろう。
まぁ、本書はそういうものだ、かかる疑問符が付けられている書だとして読破する分には、特段の問題はないだろう。
- 感想投稿日 : 2016年12月3日
- 読了日 : 2016年12月3日
- 本棚登録日 : 2016年12月3日
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