学級再生 (講談社現代新書 1561)

著者 :
  • 講談社 (2001年7月1日発売)
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感想 : 3

2001年刊行。◆今風に言えば、小一プロブレム(その中でも学級崩壊)を中核としつつ、いわゆる荒れの問題を、過去の状況との比較を交えながら解説し、さらには対応策(特に教員向けに)を論じたもの。◆遊び集団の縮小、異年齢集団の消滅といった現代の子どもを取り巻く社会的状況が、彼らの社会性・対人関係能力の滋養を妨げ、結果、学級崩壊が生じたと見ているのが本書だ。詳細な解読は説得力を持つ。◇もし本書が言うように学級崩壊の要因が社会的要因であるならば、プロ教師の会が言うような処方箋では全く歯が立たないだろう。
◆著者のいう社会的現状に鑑みると、もし、学校が子どもに社会性を修得させることから撤退すれば、その役割を果たすものが激減し、大きな損失だ。他方、社会性は強者・権力者が暴力的・威嚇的に振る舞うことで、身につけさせ得るわけではない。人間関係の多様性はそのような一義的・単線的なものではないからだ。◆仮に集団生活をする場として学校が存在意義を持つならば、社会性を身につけるためのプログラムを学校が用意することはありうるだろう。◇が、一方で、社会性を身に付けさせる場の根底に家庭・親族・地域にあることも否定できない。
ならば、社会、特に家庭との連携を強化するために、学校で策定したプログラムを保護者に正確に告知する必要があるだろう。◇とはいえ、そのプログラムの有効性ははっきりしない(結果が出るのは何年も先のこと)以上、今の保護者はプログラムに対する選択の機会を要求するのだろうな、と感じる。◆しかも、広い意味での学力の基礎に、真似ぶ=社会性が措定されるなら、単線的・画一的で、社会関係の実とは程遠い、現状の対面型の教科教育のスタイルを維持し続けるか、どの程度維持するかすらも、議論の俎上に載せなければならないと感じるところ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月7日
読了日 : 2007年1月13日
本棚登録日 : 2017年1月7日

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