憲法九条を世界遺産に (集英社新書)

  • 集英社 (2006年8月12日発売)
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武器を持てば須らく現実の諸問題が解決するとは「血塗られた悪魔」とも別の意味の「お花畑/能天気」ともいうべきだが、とはいえ、事実に依拠しない理想主義的言説も同様。個人的に、理想を唱えるのは改良・改善を漸進的にでも目指し、貴重だと考えている(トヨタのカイゼンだって同じ)。そういう意味で、憲9条に関し、「世界遺産」化は兎も角(世界遺産は過去の遺物感を醸し出し、理想を顕彰するノーベル平和賞の方がシックリくる)、理想顕彰を目指す本書のロジックには期待。が、本書の論の脈絡のなさ(話題を広げる意図ある太田は自覚的)。
さらに、事実の提示が少で、少々残念。また、理想を珍品に準えたり、お笑いに塗しながら切って見せるのは、太田・中沢の立ち位置からしてやむを得ないと思いつつも、残念な点か。◆しかし、幕末期の武士道が揶揄の対象だった点を古典落語から引く点は、芸人太田の面目躍如であり、武士道といったタカ派的物言いが依拠するファクトの相対化に繋がるだろう。また、お笑いの持つ愛嬌が、肩を怒らせながら意見を対立させる言動の止揚に繋がるとの視座は◎。2006年刊。
◆PS.本筋とは全く関係ないが、小泉政権への厳しい批判者であった「爆笑問題」を小泉政権は文部大臣賞で顕彰したとのこと。為政者は批判されるべき存在である。ならば、小泉政権の懐の深さを誰かさんも持ち合わせてもらいたいものである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 対談
感想投稿日 : 2017年1月24日
読了日 : 2017年1月24日
本棚登録日 : 2017年1月24日

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