二つの祖国(四) (新潮文庫)

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本棚登録 : 489
レビュー : 29
著者 :
reinouさん 小説   読み終わった 

 東京裁判後半。

 秘密の暴露に匹敵する東郷爆弾大炸裂に、一見凛としながら、全く的外れな東条の在り様を描き、東京裁判の幕は下りる。

 そんな中、賢治の余りにも喧しい「武士道」連呼に、言い知れぬ気持ち悪さと違和感。連呼せざるを得ないからこそ、二世を露わにしたものとも、トチ狂ってきた証左とも見えるが、心の支えが遠く離れ、かつ永遠の別れという結末に至ったことから来ているのだろう。
 ということで、孤独を癒す術なくラストは大河版と同じに。

 さて本作。
 日系米国人という境界線を生きる人物からの目線は、日米双方を相対化・俯瞰化したかに見える。
 しかし、やはり目に付くのは一面性、単層性だ。つまり「兵」から見た上層、アジア諸国から見た日本という観点が皆無なのだ。
 確かに、忠という、日本「兵」の代表足りうるキャラクターを造形した。にもかかわらず、彼もまた賢治の引力に吸い込まれ、賢治へのカウンターになり切れず、もちろん東条ら戦争指導者層へのカウンターにもならなかった。
 こういう点が本作が物語としての単層構造を突き破れなかった弱さに繋がっている。これは俯瞰的な、あるいは突き放して物語を構築できなかった著者の思い入れによるものだろう。
 確かに、自分の好きな物語を紡げた著者は満足だろう。
が、その○○に付き合うのはかなりの苦痛を感じずにはいられなかった。

レビュー投稿日
2017年2月5日
読了日
2017年2月5日
本棚登録日
2017年2月5日
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