江戸のナポレオン伝説: 西洋英雄伝はどう読まれたか (中公新書 1495)

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  • 中央公論新社 (1999年9月1日発売)
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感想 : 4

1999年刊。著者は明海大学専任講師。◆1804年ナポレオン皇帝就任。当時、日本は将軍徳川家斉期。また松平定信失脚から10年の経過。一方、同年に露レザノフの長崎来航、08年、英フェートン号事件の勃発など、欧州激震というべきナポレオン帝政成立が、日本近海にも波及していたのだろう。蘭が仏支配下にあったため、阿蘭陀風説書の内容に疑義が生まれ、幕府は多様な情報を獲得しようとしていたが、その内実が語られる。ただし、これに気づいたのは既にナポレオン失脚期の1813年。幕府の取得情報源の限定の弊害も本書では示される。
◆なお、庶民から皇帝にのし上がったナポレオンの存在が、幕末、吉田松陰の尊王攘夷(倒幕的な発想も)に示唆を与えたという本書の指摘は、尊王志士らの想念、その基盤を象徴するかのようだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年1月12日
読了日 : 2017年1月12日
本棚登録日 : 2017年1月12日

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