2015年(底本2012年)刊。
約40年後、この世界はどうなっているか。
環境・外交・食糧・人口・軍事・情報通信・エネルギー他資源・科学技術などについて、多面的な角度から検討を加える。
未来論といいつつも、さほど遠い未来ではないので、現代の問題点の網羅的把握にこそ適した書と言えそうだ。読み応えもある。
ただ、楽観的に叙述すると言いつつも、軍事・外交はさほど楽観的でない。一方で、環境・食料・エネルギーは楽観的。
というように、やはり方向性の偏頗さは感じざるを得ない。
元来、この種の書は、現状放置は危険性を孕むという警告の書であり、実際には正解せずとも構わないものである。現に本書の中でも、未来学は当たらないものと叙述されている。そういう意味で、多少厳し目に書いても過ぎたペシニズムとは思わないのに、と感じてしまう。
さて、具体的内容だが、①中国の台頭(ただし高齢化の急進展によって経済的には頭打ち)と、②米国の外交・軍事面での脆弱化(勿論、一強という事態は変わらないが、廻りにも攻め手があるし、米国も思い通りにできにくい。南北格差の解消)、あるいは③資源問題の肝は水という点は納得できるところだ。
また、21世紀は生物学の世紀である点も同様である。
逆に、国内・領域内の相対的不平等面での格差拡大には甘め。また、環境問題(温室効果ガス比率の拡大による地球環境の急変・激変。典型例が夏季北極海の全面的解氷)の甘い評価はどうにも座りが悪い。というより、叙述から何らかのミスリーディングを企図したのではと勘繰りそうだ。
他方、アフリカの帰趨と核拡散。重要なテーマだが、これは読めないなぁ。
しかも、国家財政危機が亢進し、各国とも財源確保が必要なため、全世界的において累進課税強化へ、予測する。しかしホントか?。
また、日本の衰退は既定路線。
人口減・高齢化、基礎科学への資金投入不足。応用科学は他国のキャッチアップに遭遇ゆえ。さもありなん。
さて、現在は、世界的に貫徹されているとは言えない「法の支配」。
これは正しい法律の存在とは違い、遵法の精神である。また、裁判官買収・判決の非遵守はしない信条。もっと言えば、平和的デモに権力側が銃口を向けない誠実さとこれへの信頼感。道徳的に、あるいは能力的に悪徳な政治家を選挙で落選させられる自浄作用等を含意する。
確かに、これは民主主義の十分条件ではないが、必要条件ではある。
そもそも、法の支配は予測可能性を高め、実は強者にも利益があるのだが、強者はそのことを自覚できないのが始末に負えない。
- 感想投稿日 : 2016年12月24日
- 読了日 : 2016年12月24日
- 本棚登録日 : 2016年12月24日
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