2005年刊。浅草女子短大生殺人事件(いわゆるレッサーパンダ帽事件)は自閉症者の刑事裁判として一部で注目された事件。本件は、福祉が届かず、学校教育からもはみ出し、刑事手続においても、その障害特性の理解を得られないまま、十分な審理を尽くしたか疑問を残しつつ控訴取下げで実刑判決が確定した。その実像を、障害者の視点、被害者の視点を併せ、公判手続の進展に即してルポする。個人的には著者一の書と見ている。捜査機関の取調で任意性のある供述は不可能なのに、その点は公判手続でも十分検討されたとはいえないように感じている。
逆に本書からは、乳児・幼児期の療育・教育こそが重要であること、福祉的な継続的支援の必要性を看取できる。事件発生を皆無とすることは至難であるが、福祉的な支援があれば、その発生頻度は相当程度減少できるのではないか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2017年1月5日
- 読了日 : 2017年1月5日
- 本棚登録日 : 2017年1月5日
みんなの感想をみる