アジアンアメリカンが書く人気小説って何がある?と聞けばCeleste Ngの小説を答えられることが多い。アメリカでのアジア人像を掴む一環としての基礎教養として読み進めてみようと思っている。本作が私の入門作だ。
結果から言うと、色々構築しすぎて逆に真実性を失ってしまった小説だと思った。メッセージ性をクリアにしようと、登場人物に象徴性、記号性を持たせすぎてしまった結果、人物から多面性が失われ単調になった。典型的なメロドラマの構成に、人種のスパイスを振りかけたような意外性のない物語。
一方で、描きたかったメッセージは明確だ。
ただただ周囲に馴染みたかったアジア人の男性、そして特別になりたかった白人の女性。それぞれが自分たちのエゴを子供達に押しつき、子どもたちは否応なくその負の遺産を引き継ぐ。潜在的な自己嫌悪によるアジア的な見た目を引き継いた子供に対する軽視と、そうじゃない見た目の子供の重視。直接的な、そして非直接的、時々自意識で作られた差別によって行動や態度を規範され制限される生き方。
ないよりは、ある方がいい小説。
断片的で狭窄な理解だったとしも、理解がないよりはいい。
でもきっと、もっともっと評価が高く、より広く知られる作家が育つ余地がまだまだある。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年3月1日
- 読了日 : 2023年2月18日
- 本棚登録日 : 2023年2月18日
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