出版社に公募原稿として届いたある「記録」。それは、隔絶された村落に深く根付く奇妙な土着宗教「奉森教」の継承者となった親友を訪ねた女性が遺したものだった……。
隔絶された環境、奇妙な土着信仰、独自の慣習に従って生きる人々、旧家に纏わる因習とそれに抗う者、徐々に起こる惨劇、そして怪物……いわゆる“田舎ホラー”に頻出のガジェットはほぼフルラインナップ。ないのは村人による新参者イジメくらい(よしなさいって)。
前半部は淡々、時に心霊系な脚色も入れつつじわじわと正調田舎ホラーの雰囲気を盛り上げていくが、半分を過ぎた辺りで突如弾け、一挙に阿鼻叫喚の地獄絵図な展開へ。そして明かされる惨劇の真犯人と、「奉森教」の真相……。
序盤過ぎで語られる奉森教の成り立ちや当主阿字家の屋号、仮面等で著者は怪異の正体など軽くミスリードを狙ったんじゃないか、と勝手に勘繰りもしたんだが、考えてみると表紙カバーで盛大にネタバレしとりゃせんか、これ。
とにかく中盤までの盛り上げ方、そこから驚愕のラストまで一気に読ませるページターナーっぷりは凄い。終盤のある演出はWeb小説などでよく見かけたアレなので、個人的にはやや興を削がれてしまったところはあるが、和風田舎ホラー小説の、怪作ならぬ快作、野心作かと。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
国内ホラー/怪奇幻想
- 感想投稿日 : 2022年7月22日
- 読了日 : 2022年5月29日
- 本棚登録日 : 2021年7月19日
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