斜陽 (角川文庫 た 1-4)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング (2009年5月23日発売)
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本棚登録 : 2276
感想 : 141
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何度目かの再読。「人間は恋と革命のために生まれて来た」。世間知らずで無邪気であったかず子が初めて恋というものを知った時、愛していた母が衰弱してゆくのに従って女性の強かさに目覚めてゆく。恋とは他者を通しての世界への覚醒であり、生きていく上での戦いの始まりなのかもしれない。恋すること、愛することは命懸けだから。かず子の弟・直治がボロボロになって遂には自ら死を選ぶ様は読んでいてとても痛ましい。母と直治は美しい水の中でしか生きられない綺麗な魚だったのだ。ただかず子だけが上原という劇薬を飲んで濁流の中を泳ぐ魚になった。彼女はやがて大海原へ辿り着くだろう。そこにあるのは戦いの凱歌か、或いは戦闘の虚しさなのか。せめてかず子とその子だけは幸せになって欲しいと願わずにはいられない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本文学
感想投稿日 : 2021年6月17日
読了日 : 2021年6月17日
本棚登録日 : 2021年6月17日

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