りかさん (新潮文庫)

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レビュー : 487
著者 :
ricaerururuさん    読み終わった 

・本気なのかごっこなのか分からない、ここが登美子ちゃんのすごいところだ、とようこはあっけにとられて登美子ちゃんを見つめていた。登美子ちゃんは、
「それからだよ、みんな、世の中のものみんな、ふりしてるだけなのかなあって思い始めたの」
それから登美子ちゃんはしばらく黙った。ようこは、
「でも、そう考えると、ちょっと、ねえ。ふりをやめたらどうなるんだろう。登美子ちゃんのリカちゃんがリカちゃんのふりをやめたら・・・」
登美子ちゃんは、
「それなんだよ。でもそれもリカちゃんのうちだと思ってさ。バリエーションってものだよね」
と明るく言った。ようこもほっとした。
「でも、それ、おもしろいね。鉛筆削りは鉛筆削りのふり。テーブルはテーブルのふり。椅子は椅子のふり。松の木は松の木のふり。石は石のふり。枕は枕のふり」
「そうそう、ご飯はご飯のふり。私は私のふり。お母さんは・・・」


・「それは化学染料と植物染料の違いだ。化学染料の場合は単純にその色素だけを狙って作るんだけど、植物のときは、媒染をかけてようやく色を出すだろう。頼んで素性を話してもらうように。そうすると、どうしても、アクが出るんだ。自分を出そうとするとアクが出る、それは仕方がないんだよ。だから植物染料はどんな色でも少し、悲しげだ。少し、灰色が入っているんだ。一つのものを他から見極めようとすると、どうしてもそこで差別ということが起きる。この差別にも澄んだものと濁りのあるものがあって、ようこ」
おばあちゃんは、何だか怖いぐらいにようこをじっと見た。
「おまえは、ようこ、澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなくてはならないよ」
おばあちゃんの様子で、ようこはよく分からない言葉でも心に刻んでおかなければならないものがある、と感じている。

レビュー投稿日
2015年6月13日
読了日
2015年6月13日
本棚登録日
2015年6月13日
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