街道をゆく 36 (朝日文芸文庫 し 1-38)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (1995年8月1日発売)
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本棚登録 : 199
感想 : 18

神田界隈編だけ読んだ。就職活動で東京の出版社を受験しに行く中で、神田や神保町という場所が好きになったからだ。その歴史や文化についてもっと深く知りたいと思いこの本を手に取った。

たぶん、私が神田の町を好きなのには二つ理由がある。
一つはやはり学問・文化が自然と集まる場所であること。大学や書店、出版社、古本屋、少し北に行けば上野公園など。学研都市のように後から計画して学問の集まる場所として設計された町とは違う魅力がある。何か、昔々から教養や文化を引き寄せる引力のようなものが働いているようで面白い。

もう一つは神田明神だろう。神保町界隈に神田祭の告知ポスターがあちこちに貼ってあるのを見て「人と人とのつながりや地域のまとまりがある場所なんだな」と感じた。神田祭という日本三大祭りの一つでもある祭りや神田明神という宗教的な場所があることで不思議な一体感が神田一帯にあるように感じた。

内容の話。
「神田界隈は、世界でも有数な(あるいは世界一の)物学びのまちといっていい。江戸時代からそうだった。」と本文中にもあるが、やはり物学びがあつまるようになった経緯が面白いと思った。多くの武士が江戸に住んでいた。そして武士の子弟に学問と武芸を教える私塾も自然とこの町に集まったということらしい。
日本史の授業で学んだ昌平坂学問所や湯島聖堂もこの町にあったのだと知って驚いた。夏目漱石など神田界隈で学び世に出て行ったたくさんの偉人達の人生が交わる場所に神田があったのだと思うと感慨深い。

有名人が実は神田で活躍していたと知って驚いたといえば、正岡子規と『日本』もそうだった。ジャーナリズムもこの町に引き寄せられて育っていったのだろうか。

読みやすさの話。
司馬遼太郎の他の小説に比べるとまとまりのなさを感じる。思考があっちこっちに飛んでいくのだ。なので「話がそれてしまったが」「話を元に戻そう」とやたらと出てくる。しかしむしろこれがこの作品の面白い点だろう。司馬の語りを聞きながら一緒に街歩きしているような感覚になる。それよりも、文脈に従って歴史上の人物の逸話が次から次へとでてくる司馬の博識さがやっぱりすごいなーと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未分類
感想投稿日 : 2013年6月10日
読了日 : 2013年6月10日
本棚登録日 : 2013年6月9日

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