当事者主権 (岩波新書 新赤版 (860))

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レビュー : 25
お転婆さんさん SOCIAL   読み終わった 

 中西正司氏と上野千鶴子氏の共著。中西氏については寡聞ながら初めて知ることとなり、そのエネルギーにただ驚かされた。そして意外に感じられたのは上野千鶴子氏の今までとは違う「筆力」だ。
 中西氏は確かに行動的な方だが、失礼ながら単著をお見かけしないところをみると、この本については基本的にコンセプトと主張を提示し、それを上野氏が「脚色」したのではないかと思う(違ってたらお許しを)。
 私にとって上野氏の論調は、その視点を常に極端なレベルにおいて、そこから「中庸」の部分に斬り込んで行く姿勢を取っているように感じられ、常に一人称を強調するような印象がある。
 しかし、この書において、視点は完全に中西氏のものであるように思えた。上野氏が脚色のみを担当したのであるとしたら、すばらしい黒子ぶりである。

 障碍者の介助については詳しくなかったのでいろいろと学ばされることが多かったが、高齢者の福祉については書かれていることを読んで暗うつ、とは言わないまでも救われ難いものを感じた。
 この書は10年も前、介護保険にそれなりの期待があった時代のものだ。しかし中の指摘を見ると、当初から「家族」をアテにしたものであったということ。現在もそれは同じであり、いやむしろ「在宅、在宅」と施設収容を前提に置かせないという部分など、もっと家族への負担を課すような政策になっている。
 
 そしてその一つの原因も本書ではみごとに指摘されている。社会が「平均」と「標準」を基準に設計され、政策もそれに応じたものになっているということ。しかし、「平均」と「標準」にぴったり当てはまる人間などいない。人はそれぞれ平均値からの偏差を自分で修正しなければならない。そのためには何らかの力が必要となる。そのための最も簡潔な手段は「金銭」であり、現在満足のいくだけの介護を受けようと思ったら、「財力」が不可欠な要因となっているのだ。

 10年前、私は母を看取った。そしてこの10年間、大なり小なり介護に関わる生活をしてきている。その間「制度」としても「現状」としても介護が向上しているとは残念ながら思えない。

 行政のつくる「制度」をいただくだけの「クライアント」のままでは今後もこれは変わらないだろう。本書で主張された『一人一人の個人が自らの人生の責任ある当事者として生きること』という言葉がほんとうに清冽に響く。

レビュー投稿日
2014年4月12日
読了日
2014年4月12日
本棚登録日
2014年4月12日
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