昔、菊池寛の「敵討ち」に特化した短編集を読んだときには敵討ちひとつを巡ってこれほど多くの物語があるのか、と思わされたが、「(男同士の)心中」を巡った2冊の地の巻・天の巻を読んでみて、また同様に感嘆した。
愛しているからこそ相手の体を傷つけたい、苦しませたいという歪んだ嗜虐者の描写は凄くエグイし正視できないような表現もあるが(「心中油地獄」は酷い)が、その異様な妄執は単純な愛情などひとたまりもない程迫力があり、嗜虐の大御所団鬼六も真っ青では、と思わせる。昔読んだ団鬼六の「美少年」は、女のような所作で媚や恥じらいなんかも見せるような、あまり男性的なところがないという特徴だったと記憶してるけど、栗本薫の描く少年達は、もちろん性格は多彩でこれと一辺倒ではないのだが、「青々しく凛然として、いかに惨く扱われようといささかの崩れもない氷雪に似かよった純潔」(本文より)をもつという特徴が際立ってると思う。読む側としてはこっちのがそりゃもう魅力的なわけだ
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説(1992〜2003)
- 感想投稿日 : 2009年11月3日
- 読了日 : 2009年10月28日
- 本棚登録日 : 2009年10月28日
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