尾崎豊 覚え書き(小学館文庫) (小学館文庫 R す- 1-1)

著者 :
  • 小学館 (1997年12月5日発売)
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本棚登録 : 53
感想 : 10
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尾崎豊さんを育てた音楽プロデューサー・須藤晃さんが、出逢いから10年の歳月を綴った本。ともに闘い、苦しみながら生み出した名曲・名盤の秘話やインタビューが読めます。10代3部作アルバムは、ふたりの合作であったようです。それはとても興味深くはあるけれど、知るほどに痛ましい気持ちになりました。 『瞳のきれいな傷つきやすい少年』尾崎豊さんが、大人によって【尾崎】【OZAKI】に祭り上げられていく物語でもあります。むしろ、この本で感動的なのは、尾崎豊さんの素顔の部分です。


尾崎さんの移籍後、須藤さんが入院したときにすぐ見舞いに来てくれたという場面。『須藤さん、治ったらいっしょにやりたいです!』と励まし、尾崎さんだと気づいた看護婦や患者が騒いでも嫌な顔ひとつせず、『あの、このひとをよろしくお願いします』と、みんなに頭を下げてくれた。須藤さんは〈アーティストOZAKIではない、21歳の普通の青年・尾崎豊だった〉と書いています。


薬物依存にも触れています。〈扉を開けるとその先は崖だ、落ちるよと教えたが、扉を開けるなとは言えなかった〉〈いまだにそれ以上の言葉は見つけられない〉と書いています。


尾崎豊さんは、『きみを愛してる』と『僕はきみの味方』と言ってほしかったのではないでしょうか。。。

最後に須藤さんは〈彼の輝く瞳は夜空の星になったと思う。存在そのものが一時の夢であったかのようだ。僕はいつになったらこの眩いばかりの夢から覚めて、正しい答えを育むことを始められるのだろうか。いつになったら。〉と苦しい胸の内を書いています。


NHKBS『大人になった君たちへ』という尾崎豊さんの番組に登場されていた須藤晃さんの、苦悩に満ちた険しい顔の理由が、わかった気がしました。


私はこれからもずっと、尾崎豊さんの曲を聴き続けていきます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 一般書籍
感想投稿日 : 2012年11月30日
読了日 : 2012年11月30日
本棚登録日 : 2012年11月30日

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コメント 1件

bobaさんのコメント
2012/12/03

りなみさん。

レビューをありがとうございます。

須藤さんが尾崎豊さんと二人三脚で音楽をつむいできたことは知っていたつもりでしたが、まだ彼が変わらず苦悩を抱えていようとは思いもよりませんでした。

尾崎さんは須藤さんにはっきりと言葉にして言って欲しかったのでしょうか?

言わなくても通じていると…

きっとああ言えばよかった。こうすればよかった…

須藤さんは今、何を思い、何を感じているのか…

そんな須藤さんを空の上から見ている尾崎さんはどう感じているのか…

そんなことを思わせる著書なのですね。

一度手にとってみたいと思います。

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