尾崎豊さんを育てた音楽プロデューサー・須藤晃さんが、出逢いから10年の歳月を綴った本。ともに闘い、苦しみながら生み出した名曲・名盤の秘話やインタビューが読めます。10代3部作アルバムは、ふたりの合作であったようです。それはとても興味深くはあるけれど、知るほどに痛ましい気持ちになりました。 『瞳のきれいな傷つきやすい少年』尾崎豊さんが、大人によって【尾崎】【OZAKI】に祭り上げられていく物語でもあります。むしろ、この本で感動的なのは、尾崎豊さんの素顔の部分です。
尾崎さんの移籍後、須藤さんが入院したときにすぐ見舞いに来てくれたという場面。『須藤さん、治ったらいっしょにやりたいです!』と励まし、尾崎さんだと気づいた看護婦や患者が騒いでも嫌な顔ひとつせず、『あの、このひとをよろしくお願いします』と、みんなに頭を下げてくれた。須藤さんは〈アーティストOZAKIではない、21歳の普通の青年・尾崎豊だった〉と書いています。
薬物依存にも触れています。〈扉を開けるとその先は崖だ、落ちるよと教えたが、扉を開けるなとは言えなかった〉〈いまだにそれ以上の言葉は見つけられない〉と書いています。
尾崎豊さんは、『きみを愛してる』と『僕はきみの味方』と言ってほしかったのではないでしょうか。。。
最後に須藤さんは〈彼の輝く瞳は夜空の星になったと思う。存在そのものが一時の夢であったかのようだ。僕はいつになったらこの眩いばかりの夢から覚めて、正しい答えを育むことを始められるのだろうか。いつになったら。〉と苦しい胸の内を書いています。
NHKBS『大人になった君たちへ』という尾崎豊さんの番組に登場されていた須藤晃さんの、苦悩に満ちた険しい顔の理由が、わかった気がしました。
私はこれからもずっと、尾崎豊さんの曲を聴き続けていきます。
- 感想投稿日 : 2012年11月30日
- 読了日 : 2012年11月30日
- 本棚登録日 : 2012年11月30日
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