霊応ゲーム (ハヤカワ・ノヴェルズ)

  • 早川書房 (2000年2月1日発売)
4.10
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本棚登録 : 509
感想 : 86
5

ブクログに限らず、他の人が感想としているようなリチャードはヤンデレだとする感想の意味は最後まで分からなかったです。
ただし後味は凄く悪い! 誰も彼もが救われなく、そこがまたリアリティーとして読者に衝撃を与えているような気がしました。

リチャード=ジョナサンに対しての凄まじい執着(ヤンデレ)と捉える人が多いみたいですが、私の感想は違いました。単に最後まで自分を見てくれなかった母の代用品を彼に求めただけのような気がしてなりません。もっといえば、彼は誰かのためにしか生きられない、そういう生き方しか知らないのだと感じます。
最終的にジョナサンに図星をつかれ、カッとなって手を出してしまったような印象を受けましたし。

ヤンデレとか一般にも浸透していてお手軽な感想言葉として使われたのかな? と事の顛末を知ってから思いました。
しかしリチャード怖いよ!
どこで聞きつけたのかヘンリー・アッカーリーの事件を調べ上げたり、状況証拠と自己満足にも似た推理でアラン・スチュアートを自殺にまで追い詰めたり。行動的だなと、変なところで関心してしまいました。
これが思春期特有のとりあえず自分の考えは正しいんだという、自己の正当化と戦後という特殊な状況がもたらす排他主義なのかと、言いようのない恐ろしさがあります。
英国でも社会問題ともなっているイジメが根本のテーマとなっているせいか、終始文体は「イジメなんてしてると、ろくな事にならないぞ」と訴えかけてくるような重たさがありますが、読む価値はあります。

本作をどうしても読みたくて、アマゾンのマーケットプレイスで定価以上の値段で購入しただけの価値はありました。普段はこういった後気味悪い作品は敬遠するのですが、緻密かつ繊細なプロットに引き込まれました。
気がつけば徹夜していて、起床時刻を過ぎていることを読み終わってから知らされるほどに。今日が休みで良かった…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国文学
感想投稿日 : 2012年9月19日
読了日 : 2012年9月19日
本棚登録日 : 2012年9月14日

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