カフネ

著者 :
  • 講談社 (2024年5月22日発売)
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本棚登録 : 2228
感想 : 86
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Amazonの紹介より
一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。
法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。


弟の死や離婚で精神的にボロボロな薫子。そんな時、弟の遺言書が見つかり、そこで弟の元恋人に会うことになるのですが、その元恋人・せつなのキャラクター性が印象深かったです。仕事は家事代行の主に料理をしているということで、頭に浮かんだのは、テレビ番組に出てくる家政婦の志麻さんでした。

といっても、志麻さんの雰囲気とはまったく違く、ぶっきらぼうで冷たい存在を放っています。ただ、料理はピカイチであり、料理も紹介しているのですが、どれもそんなに難しいそうではないのに、美味しそうで食べたくなりました。
初版には一部レシピも紹介されていて、作ってみたくもなりました。
家事代行サービスということで、イメージとしてお金に余裕のある方が頼んでいる印象でしたが、申請すれば色んな方にも安価で提供できるとは知りませんでした。
少しでも負担が緩和できるということで、色んな方に利用していただきたいです。

さて、弟に着目すると、心不全ということでどこかミステリアスなのかなと思ったのですが、それよりも弟の背景を深掘りしています。姉から見た弟の印象と元恋人から見た弟の印象はどこか違っていて、弟の足跡が注目点かなと思いました。

深掘りしていくうちに、弟に隠された真実やせつなの過去、弟との接点が段々と明らかになっていき、驚きの連続でした。

薫子は薫子で、これまでの人生を紐解いていくたびに心苦しかったです。普通に人と厳しいながらも対応していく一方で、心の内は疲れている様子に悲しさや切なさを滲ませていました。

姉弟だけでなく、周囲の人たちも心の悩みを抱えています。その描写が繊細で心を打たれました。
阿部さんというと、車椅子といった障碍者を中心にした作品が印象的で、その人自身の悩みや周囲の反応といった描写が丁寧に描かれています。

この作品でも、その延長線上として、心の悩みが丁寧に描かれていました。
誰しも人には言いたくない悩みがあって、なかなか周囲とどう打ち解けていくのか難しいところです。
周りから見ても、相手を理解することがいかに大変か、いつまでも難しいなと思ってしまいました。

そんな心を薫子の優しいながらも芯のある言葉がちらほら登場するのですが、ジーンと感動してしまいました。

内容としては、シリアスさのある空気感があったのですが、料理によって、温かい空気感も漂っていて、程よい空気感がありました。
ラストでは、「なるほどこんな展開なんだ」とちょっと驚きはあったのですが、ドロッとした感覚はなく、ナーバスなテーマながらも、サラッと扱っていたので、良いバランスが取れていたなと思いました。

料理は人を幸せにする。伺う先々で悩んでいる人達を2人のコンビで支え合ってサポートしている姿に安心感も相まって、これからも頑張ってほしいなと思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2024年6月
感想投稿日 : 2024年6月8日
読了日 : 2024年6月4日
本棚登録日 : 2024年6月4日

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