罪人の選択

著者 :
  • 文藝春秋 (2020年3月27日発売)
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本棚登録 : 740
感想 : 85
3

初期の作品からちょっと前までの作品を4編集めた短編集です。
SFを中心としていて、3編が近未来、1編が過去の世界に設定されています。個人的に全て共通していたのは、不気味さでした。読みづらさはありましたが、段々と慣れていくにつれ、独特な貴志ワールドにつれていかれるようで、貴志さんの原点を読んだ感覚がありました。

初期の作品「夜の記憶」では、言葉の表現が堅苦しく、なかなか世界観を掴められなかったのですが、独特の世界観がありました。構成も独特で、原石を読んでいる印象がありました。
「呪文」では、「新世界より」っぽい雰囲気を醸し出していました。惑星で起きる奇妙な現象や昆虫など不気味さが文章から滲み出ていて、一種の恐怖感がありました。
「罪人の選択」が個人的には、スーッと世界観が入り込めやすく、一番面白かったです。二つの時代で起きた毒殺事件の真相が、ゾワっと後味が残る不気味さを醸し出していました。二人の緊迫した心理戦が読み手にまで伝わり、背筋が凍りました。さらに意外な展開に発展し、短編ながらも満足感がありました。
「赤い雨」では、読んでいて頭をかすめたのが、新型コロナウィルスでした。現象が似ているところがあり、もし近未来に新たなウィルスが誕生した場合、最終形態として、こうなるんじゃないかと思ってしまいました。短編でしたが、長編を読んでいるようで、ボリューム感がありました。

「鍵のかかった部屋」のようなミステリーではなく、「新世界より」のような近未来感が好きな方には、おすすめかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年3月
感想投稿日 : 2020年3月29日
読了日 : 2020年3月29日
本棚登録日 : 2020年3月29日

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