KAGEROU

2.70
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本棚登録 : 4973
レビュー : 1190
著者 :
なまこさん 小説   読み終わった 

鳴り物入りで発売された齋藤智裕氏のデビュー作。
本を開いた時にまず受ける印象は、文字が大きく行間がスカスカであるという事。文体も荒削りで語彙もそんなに多くはない。
それも手伝ってか一時間で読了した。
が、幾ら文字が大きかろうが面白くなければそんなに読み進める事は出来ないので、一気にラストまで読ませてしまう力のある作品だと思う。

自殺を間違いなく執行しようとするヤスオと、そこに現れたキョウヤ。
最初に「ドナー」という文字が見えた時、なるほどそこを終着点にするのか、と息を呑んだ。
色々と非現実的な流れを汲みながらも、話は淡々と進んでいく。
物語の冒頭から死に急ごうとするヤスオは、その癖、飄々とした性格をしており、彼が自殺志願者なのだという悲壮感を感じさせない。
対してキョウヤは、初登場時は何を考えているのか良く分からない怪しげな男という印象だが、話が進むにつれて仕事と割り切る彼の中に潜む苦悩や、疲労など人間臭い所が垣間見え、寧ろ彼の方が死んでしまうのではないかという気持ちにさせられる。(結果としてそれに近い状態になってしまったのだろうが)(キョウヤの「脳」は志半ばで逝ってしまったのだろうか、と考えると多少複雑な気持ちになる)

何よりも本編最終ページの誤植修正シール。事前にその修正の事は知っており、ミスをシールで修正など今時珍しい、と思っていた。
ラスト数ページの展開にぎょっとして、最後まで読み終え、その後にまさかと思ってシールを剥がしてみると、そこには予想通りの文字が……。
成る程、あれは実に心憎い演出だ。てっきり本当に急いで修正したのかと思っていたが、計算の内だという事は明白だ。
あの演出を思いついた編集者(か誰かは分からないし、もしかすると著者本人かも知れないが)には純粋に感嘆する。
と言う訳で、本編自体には文章力の向上など今後の期待を込めて★三つ、このシールの演出でオマケに一つ付け足したい。

【追記】手書きノンブルについて、29ページと30ページを強調する意味合いであのページだけ手書きなのが、これまた憎い演出だ。

レビュー投稿日
2010年12月16日
読了日
2010年12月16日
本棚登録日
2010年12月16日
4
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