カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)

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本棚登録 : 295
レビュー : 37
著者 :
制作 : 貝澤 哉 
rose2429さん 物語   読み終わった 

初めて手にしたナボコフであり噂通り強烈な印象を残した「ロリータ」と、この「カメラオブスクーラ」で作者の著書は2作目です。
あとがきにもありましたが、読みはじめ辺りから感じるこの気持ちの悪さは読んだ覚えがあるなぁなんて思っていましたが、「ロリータ」と流れが似ている。
私はなぜ、大人の男性の狂おしいまでの想いに少なからず違和感を覚えたのか、読みながら考えていました。
おそらく、彼が求めていた少女と実際に接触するまでの男性の内面の描写が、女である自分には馴染みのないものだからかな、というのが読み終わってから気づいた私なりの気持ちです。

美術評論家であり、妻子とともに裕福な暮らしを送るクレッチマーは、映画館で見かけた美しい少女マグダに激しい恋心を抱きます。
なめらかな肢体に触れる幸運に目がくらみ、クレッチマーの行動はエスカレートしていきますが、マグダもまた止められない情欲を他の男性に抱いていました。

最後には本当の「破滅」が待っていますが、ストーリー自体に新鮮さは特に感じませんでした。
ナボコフの良さを感じたのは、その描写の方法です。

クレッチマーがむちゃくちゃやろうが、愛人マグダがさらにマイ愛人を作ろうが、まるで美しく花から花へ飛び交う蝶のように、ナボコフは情景を二次元、三次元と描いていきます。
聞くだに気が滅入りそうな人物やストーリーも、精緻に描き出された情景がもたらす効果によって、どんどんと映画のように視覚的なスピード感を持って頭の中を流れていくようでした。
言葉というものを生涯かけて操ろうとしたような、なんとも不思議な深さを感じました。

レビュー投稿日
2017年5月12日
読了日
2016年12月8日
本棚登録日
2017年5月12日
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