思考実験とはなにか―その役割と構造を探る (ブルーバックス 643)

著者 :
  • 講談社 (1986年3月1日発売)
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感想 : 2
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落下速度と重さの関係を主張するアリストテレス流運動論を難じるガリレイや、相対運動のみを主張し絶対運動を否定するマッハなど科学史に立脚した思考実験についての入門的著作。
哲学の方法論として思考実験になじんできた立場から見ると、科学史上の具体例がおおざっぱながら分かりやすく語られていて、楽しく読むことができた。

しばしば思考実験は哲学だけではなく自然科学の中でも重要な位置を占めてきたと言われる。その実例を垣間みるにはうってつけの一冊だったと思う。1980年代に発行されたものだが、「思考実験」というテーマを扱った入門書が日本語で手軽に読めるという点で大変貴重。思考実験という言葉を使い出したマッハを始め、ポパーやクーン、ラカトシュなど科学哲学でおなじみの名前も散見される。科学史家よりも、自然科学に疎くて哲学をしている人間にありがたい一冊である。

ただし、筆者も冒頭で述べるように、本書は「入門書」のスタイルに徹しており、分かりやすいが厳密さは犠牲になっている。あくまでとりあえず情報を一覧するためといってよいと思う。それだけに流し読みのまま気負わずに通読できるのも事実なのだが。

以下は哲学的方法論としての思考実験について思うところである。本書を読んで、やはり思考実験は、実際におこなわれる実験(本書では「現物実験」と呼ばれていた)とは適切に区別されなければならないと強く思った。
思考実験の身分はそれだけで哲学の話題になる。思考実験を実験の一種とみなし、実際の実験と共通する特性に重きをおく語り方もみかける。だが、やはり両者は別のものであろう。仮に両者に違いがないとすれば、思考実験だけしていればすむことになるわけだが、そのようなことは科学の中でありえない。実験器具やその手法を洗練させることに労力を使ってきた科学者達の歴史を慮れば、実際に仮説を検証する操作(実験)なしには自然科学は成立しないことはすぐに理解されるだろう。当然のことだが、思考実験と現物実験の共通点に拘泥するあまり見失わないようにしたいポイントである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 仕事関係/哲学
感想投稿日 : 2012年2月20日
読了日 : 2012年2月18日
本棚登録日 : 2012年2月20日

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