社会はなぜ左と右にわかれるのか――対立を超えるための道徳心理学

  • 紀伊國屋書店 (2014年4月24日発売)
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・心は<乗り手(理性にコントロールされたプロセス)>と<象(自動的なプロセス)>という二つの部分に分かれる。<乗り手>は、<象>に仕えるために進化した。
・誰かが道徳的に唖然としているところを観察すれば、<乗り手>が<象>に仕えている様子を確認できる。何が正しく、何が間違っているのかについて直観を得たあとで、その感覚を正当化しようとするのだ。たとえ召使い(思考)が正当化に失敗しても、主人(直観)は判断を変えようとしない。
・社会的直観モデルは、ヒュームのモデルから出発して、さらに社会関係を考慮に入れる。道徳的な思考は、友人を獲得したり、人々に影響を与えようとしたりする、生涯を通じての格闘の一部と見なせる。つまり「まず直観、それから戦略的な思考」である。道徳的な思考を、真理と追求するために自分ひとりでする行為としてとらえる見方は間違っている。
・したがって、道徳や政治に関して、誰かの考えを変えたければ、まず<象>に語りかけるべきである。直観に反することを信じさせようとしても、その人は全力でそれを回避しよう(あなたの論拠を疑う理由を見つけよう)とするだろう。この回避の試みは、ほぼどんな場合でも成功する。p97

この効果は「感情プライミング」と呼ばれている。というのも、最初の単語が引き金となって、ある一定の方向に傾くよう、その人の心を準備させる感情の突発が引き起こされるからだ。p107

覚醒を引き起こす文化心理学の力に関して、シュウィーダーは1991年に次のように述べている。
「私たちは他人のものの見方をほんとうに理解するとき、自分の理性の内部に秘められた潜在的な可能性の認識に至り、...そのような見方が、初めて、あるいは再び重要なものとして立ち現れ始める。私たちの生きる世界に、均質的な「背景」などない。私たちは生まれつき多様なのだ。(Shweder, R. A "Thinking Through Cultures: Expeditions in Cultural Psychology", 5p)

道徳心理学の歴史を通してもっとも簡潔で先見の明に富んだ文章で、ダーウィンは道徳の進化の起源について次のように述べている。
「最終的に、私たちの道徳的な感覚や良心は、高度に複雑化した感情の形態をとる。社会的直観に端を発し、おもに他の人々の称賛によって導かれ、理性、利己心、そしてやがては深い宗教感情に支配され、教育や習慣によって確たるものになる。」p305

さて、私の提起する道徳システムの定義が、次のようになる。
:道徳システムとは、一連の価値観、美徳、規範、実践、アイデンティティ、制度、テクノロジー、そして進化のプロセスを通して獲得された心理的なメカニズムが連動し、利己主義を抑制、もしくは統制して、協力的な社会の構築を可能にするものである。p416-417

イデオロギーに関するもっとも基本的な問いに「現行の秩序を維持するのか、それとも変えるのか?」というものがある。1789年、フランス革命時の国民議会で、現状維持を支持する者は部屋の右側に、変革を求める者は左側に座った。それ以来、右と左は、保守主義とリベラルを意味するようになった。p426

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会科学
感想投稿日 : 2017年8月17日
読了日 : 2018年1月7日
本棚登録日 : 2017年8月17日

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