マクルーハンの光景 メディア論がみえる [理想の教室]

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  • みすず書房 (2008年2月19日発売)
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入門テキストとしてはかなり平易な部類。

【テキスト マクルーハン『外心の呵責』(agenbite of outwit)宮澤淳一訳】
*Marshall McLhan, "The Agenbite of Outwit," Location 1, no.1 (Spring 1963)(1963年春にニューヨークで発刊された雑誌『ロケーション』の第一巻第一号(創刊号)に収録された文章)
新しく登場した電子メディアのもつ部族化の力は、古い口承文化の統合された場や、部族的な結束力と前個人主義的な思考パターンに私たちを連れ戻すが、これはほとんど理解されていない。部族主義(tribalism)とは、一族すなわち、共同体の規範としての閉じた社会のもつ強い絆の感覚である。リテラシー、すなわち視覚的テクノロジーは、細分化と専門化に重きを置く手段によって部族の魔術を消失させ、個人を生み出した。ところが電子メディアは集団的形式である。文字文化以後の人間が利用する電子メディアは、世界を収縮させ、一個の部族すなわち村にする。そこはあらゆることがあらゆる人に同時に起こる場所である。あらゆることは起こった瞬間にあらゆる人がそれを知り、それゆえそこに参加する。p13

中枢神経系を外に出したとき、私たちは原始的な遊牧民の状態に回帰した。最も原始的な旧石器時代の人間になり、再び地球を放浪する者となったのである。しかし、採集するのは食糧ではない、情報である。これからは、食糧と富も生活自体も、その源は情報となるだろう。p14

〘第1講 マクルーハン精読〙
【感覚比率】p42
私たちのさまざまな感覚は「閉鎖体系ではなく、意識と呼ばれる綜合的な体験の中で互いに際限なく転換されていく」のですが、これらの感覚(視覚、聴覚、触覚、味覚、臭覚、筋感覚など)の発揮の度合いには差があり、そこに均衡が保たれて私たちの知覚は構成され、「理性」(rationality)も保たれます。そうした感覚どうしの比率をマクルーハンは「感覚比率」(sense ratios)と呼びました。

【テレビは視覚ではなく―】p59
実は、マクルーハンによれば、テレビは視覚の拡張ではない。触覚の拡張なのです。彼いわく、テレビ画面とは小さな光の点の集まりである。それがモザイク的な編み目を構成して映像(イメージ)を見せる。一種の点描画とも言える。点だけでは不完全な画像であるため、私たちは点のあいだを想像力の中で埋めていく。詳細な情報を与えないから、私たちは能動的に参加するのだ。テレビの走査線の光は、メッセージを私たちの肌に刺青していくようなものなのだ、と(「プレイボーイ・インタヴュー」)。実際、画面がモザイクであって、ピクチュアではないところにマクルーハンは注目してて、モザイクは触覚的(tactile)であることを他の機会にも述べていました。

彼は触覚の拡張を「諸感覚の相互作用」と考えていました。つまり、視覚を通り越して、触覚に直接訴えかけ、全身感覚を動員する(全感覚を拡張する)のがテレビだと主張したのです。
メディアを区分したときの特徴はほかにもあります。ホット・メディアには、「独白」(monologue)を特徴とするメディア(講演)が、クール・メディアには、「対話」(dialogue)を求めるメディア(電話、話し言葉、セミナー)が含まれていることも注意してください。「対話」とは参加の一形態であり、メディアを暖めるのです。
そして「独白」から想起されるのは「直線性」です。テキスト「外心の呵責」で読んだように、「直線性」あるいは「線的」な傾向とは表音アルファベットとグーテンベルクが導いた時代の特徴です。つまりホット・メディアとは、専門化や細分化を導いた従来の「グーテンベルク時代」の産物としてのメディアだと気づきます。単一の感覚に訴えるメディアが並んでいることからもわかります。すると対極のクール・メディアも自明です。「対話」や全身感覚に訴えるクール・メディアとは、中枢神経系の拡張した「電子時代」を代表する電子メディアか、再部族化において見直される聴覚重視のメディアなのです。p94-95

【地球村の3つの特徴】p124
①同時多発性(各地でさまざまなことが同時発生、即時の伝播、万人の参加・関与)
②混迷の世界(現状認識・非予言性)
③過渡期(未来への期待)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 情報/テクノロジー/メディア
感想投稿日 : 2014年6月18日
読了日 : 2014年6月19日
本棚登録日 : 2013年6月1日

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