大名廃絶録 (文春文庫)

  • 文藝春秋 (1993年1月1日発売)
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感想 : 6
4

江戸時代260余年の間に改易・削封された大名の数は240家にものぼる。
そのりゆうは世嗣断絶・幕法違反・乱心などさまざま。
本書では御家滅亡の憂き目にあった代表的な12家の大名をあつかっている。
内容は割と硬派で、取り潰しに至るまでの原因と経過を細かく分析している。
本書で取り上げた十二家は取り潰しの理由も様々。
藩主自身の個性や藩の重臣の不手際、そもそも藩主と重臣との不和による内乱などなど。

特に面白かったのが、会津藩主加藤明成のエピソード。
若くて藩主の座についた明成。
家老とそりが合わず家中でいがみ合いが続く。
家老は普段から明成をバカ殿と蔑んでいたから、遂に城に向けての発砲を置き土産に他国へ退去。

「武士の面目にかかわる!』と怒ったのがこの若い君主。

高野山に逃げ込んでいた家老一家をひきずりだして
処刑するという話。
戦国の気風が残っているエピソードだけに凄まじかった。
特にこの家老が処刑されるシーンは印象に残った。


当日の斬首役は、堀川嘉兵衛。
本来であれば、家老に顔をあげて物を言う事さえ出来ぬ軽輩。
この男が処刑される家老の顔色が尋常ではないのを見て、刀を抜いてその目先へ突きつける。

「只今が最後ぞ、頸が曲がっておるのは見苦しい。しゃんとせい」

家老は思わずカッとなって
「推参なり、下郎、言葉が過ぐるぞ」と嘉兵衛の方を顧みようとしたところ、すかさず一刀打ち下ろして頸をはねた。

後になって同僚から家老に対してなぜ無礼な態度をとったのか?と聞かれて答えたのが、

「罪人の面色ただならず、死後の害心を現している時は、その憤りを一瞬他に転ぜしめてから斬るのがよいのだ」

と、言ったというのだからスゴイ。。。。
首切り役にもいろんなノウハウがあるのだと、感心しました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2012年11月9日
読了日 : 2012年10月8日
本棚登録日 : 2012年11月9日

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