「高級レストランには興味ないし、かといって早朝の粥屋をひいきにする趣味もない。香港人との暖かい交流があるわけでもなく、高級品を安く買って「ウワーこんなに安いぞ。さすがは香港だなあ」などと感心することもない。そんなひねくれた人たちの香港旅行に、少しでもこの本がお役にたてば幸いである」(p.317)
かのクーロン黒沢氏が20代の頃に書いたこのデビュー作をいま読むのは旅行ガイドとしての期待からではない。いかがわしい海賊品、苛立たしいぼったくり、発展途上のマーケット、アジアの喧騒、ネットスケープ時代のインターネット…。猥雑な90 'S文化の濃厚な匂いを感じ取るためである。ヴェイパーウェイブのファンは一読の価値アリ。「返還後はこのような雑誌は検閲により販売されないから今のうちに買っておけ」という意味が誌名に込められているという、かつて香港で刊行されていたポルノ雑誌『香港97』の話がよかったですね。「いま香港ではビルなどの名前に数字をつけるのがブーム(東方188商場、298電脳特区とか)、数字の意味は不明」とあるが、たしかに謎の数字があると中華風味を感じませんか。551蓬莱とか⋯。
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- 感想投稿日 : 2018年4月1日
- 読了日 : 2018年4月1日
- 本棚登録日 : 2018年4月1日
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